大会日時:2024(R6)年8月23日
会場:長野県立武道館(佐久市)
取材・文:古田英毅/写真:辺見真也・中島実
準決勝まで
決勝は関東勢同士の対決。下地琉仁(神奈川・東海大相模高中等部)と岡本煌栄(埼玉・埼玉栄中)によって争われることとなった。
下地は関東ブロック大会の王者。今大会は優勝候補の筆頭格として徹底マークを受けたが、これを跳ね返してみごと決勝に勝ち残った。初戦(2回戦)は平良健成(沖縄・南風原中)を2分47秒「指導3」の反則で下し、3回戦は近畿ブロックの準優勝者・森部泰心(兵庫・望海中)をGS延長戦27秒得意の右内股「一本」に仕留める。準々決勝は川端倫育(東京・国士舘中)をGS延長戦1分3秒右払腰「技あり」に仕留め、準決勝はここまで全試合一本勝ちで非常に目立っていた堂森遥空(宮崎・日章学園中)を僅か37秒、鮮やかな右内股で宙に舞わせて文句なしの「一本」。堂々たる勝ち上がりだった。
関東ブロック大会3位の岡本は、団体戦ではエースとしてチームを牽引。この日に団体戦と併せた大会二冠獲得が掛かる。2回戦は中堀駿(滋賀・能登川中)を2分16秒合技「一本」、3回戦は佐藤慧珠(青森・車力中)を2分3秒左大内刈「一本」、準々決勝は東海ブロック王者の岩木闘空(愛知・大成中)を1分24秒左大内刈「一本」と圧倒的な勝ち上がり。
勝負どころの準決勝はこちらもここまで他を全く寄せ付けずオール「一本」で勝ち上がって来た川口陽生(広島・崇徳中)と激戦。この試合は岡本が左、川口が右組みのケンカ四つ。川口の強気の両襟、そして強い体幹と筋目の良い作りの投技を前にこの試合は苦戦。得意の左大内刈は弾き返され、苦しい時間が続く。それでも己から仕掛け続け、単発傾向の相手に連続攻撃でプレッシャーを掛ける。そしてともに「指導」1つで迎えたGS延長戦41秒、己の左大外刈をトリガーに始まった攻防で川口の右内股を綺麗にすかし「一本」。みごとオール「一本」で決勝に勝ち上がることとなった。
決勝
岡本煌栄(埼玉・埼玉栄中)○GS僅差(GS3:47)△下地琉仁(神奈川・東海大相模高中等部)
下地が右、岡本が左組みのケンカ四つ。関東ブロック大会準決勝では下地がGS延長戦「技あり」で勝利した来歴のあるカード。
釣り手は下地が下から、岡本が上から肘を載せて対峙。下地は両襟から右内股、岡本は引き手で袖の外側を掴んでの左大外刈と攻め合う。岡本が左大外刈に踏み込めば下地が右出足払を合わせ、下地が閂の釣り手から「サリハニ」を経由しての右内股を見せれば岡本が弾いて潰し、出だしはまさに拮抗。続いては互いが手先を回しての引き手争いとなり、下地が襟を掴んで右内股の動作を起こしたところで主審が試合を止める。引き手争いはタイと思われたが腕の長さで印象が変わったか、審判団は下地のみに片手の「指導」を付与。試合時間は1分5秒。
奮起した下地、引き手で袖を掴みながら思い切った一足の右内股。大きく浮かされた岡本、軌道の頂点で体が回りかけたが辛くも伏せて「待て」。岡本はすぐさま引き手で袖の外側を得ての左大外刈で対抗、ケンケンで刈り込むも下地は腰を切って真っ向から受け切り「待て」。試合時間は1分55秒。
以後はともに威力のある技を打ち合うも、岡本が手数で上を行き、しかし下地が散発ながらも威力ある技を入れて展開を保つという構図で試合が進む。岡本は左内股に左大外刈、下地は右内股で攻め、互いがこれを真っ向受け切って展開は拮抗。あっという間に本戦3分間が終わり、試合はGS延長戦へ。
延長戦は岡本が続けて攻め、下地が一発で展開を保つという構図がさらに加速。岡本が左内股からケンケンの左大内刈で場外まで追うも下地は耐え切り、肘を上げての右内股で展開を押し返す。GS延長戦1分3秒、岡本が刈り足を着いての左大内刈で捩じり、捲られた下地が大きく崩れる場面があったがこれはノーポイント。岡本はこの攻防の直後、大技の余韻が残る中で引き手の手先を回して両者反則を狙う罠を張る巧みさを見せたが、一瞬応じた下地が両襟の右内股を放ってこの構図を断ち切る。
互いに良い技を打ち合う絵が続くが、GS延長戦2分を超えるあたりから岡本の仕掛けの頻度が増し始める。危機を感じた下地は岡本の奥襟に背中横抱きの右大腰を合わせて抗するが、これも岡本が潰して「待て」。岡本はここで足技に振り、一足の左内股をフェイントに左出足払を入れる野心的な仕掛け。タイミングをずらされた下地が崩れると左大外刈に乗り込んで伏せさせる。
ここで審判団が決断。GS延長戦3分47秒、主審が下地に消極的試合姿勢の「指導」を与えて勝負が決することとなった。
入賞者と優勝者談話、準々決勝以降の結果は下記。全試合結果は別掲。
成績上位者
(エントリー48名)
優 勝:岡本煌栄(埼玉・埼玉栄中)
準優勝:下地琉仁(神奈川・東海大相模高中等部)
第三位:堂森遥空(宮崎・日章学園中)、川口陽生(広島・崇徳中)
第五位:髙田友聖(徳島・阿波中)、川端倫育(東京・国士舘中)、岩木闘空(愛知・大成中)、坂詰優斗(福島・三春中)
談話
岡本煌栄(優勝)
「最高の気分です。きつい試合が続きましたが、どんな重量級よりもきつい練習をしてきたつもりですし、体力には自信がある。気持ちが折れることはありませんでした。(―準決勝は厳しい試合を投げて勝利)なかなか投げられませんでしたが、掛け続けて圧を掛けることは出来ていた。先生や観客席の「行く時だぞ!」という声が聞こえて、思い切って仕掛けました。(―決勝も壮絶な投げ合いでした)自分もきつい時は相手もきつい、と言い聞かせながら、何としても勝つんだと掛け続けました。(―団体と二冠)それも嬉しいですが、次のマルちゃん杯に繋がる優勝だと思っていて、それが良かったです。将来の夢はオリンピックの金メダル。パリ大会を見て、自分もここに出たい、と強く思いました。尊敬する選手は、井上康生選手です。」
岡本煌栄・この日の5試合
【2回戦】岡本煌栄(埼玉・埼玉栄中)○合技(2:16)△中堀駿(滋賀・能登川中)
【3回戦】岡本煌栄○大内刈(2:03)△佐藤慧珠(青森・車力中
【準々決勝】岡本煌栄○大内刈(1:24)△岩木闘空(愛知・大成中)
【準決勝】岡本煌栄○GS内股すかし(GS0:41)△川口陽生(広島・崇徳中)
【決勝】岡本煌栄○GS僅差(GS3:47)△下地琉仁(神奈川・東海大相模高中等部)
試合結果
【準々決勝】
堂森遥空(宮崎・日章学園中)○合技[小外刈・袈裟固](0:28)△髙田友聖(徳島・阿波中)
下地琉仁(神奈川・東海大相模高中等部)○GS技あり・払腰(GS1:03)△川端倫育(東京・国士舘中)
岡本煌栄(埼玉・埼玉栄中)○大内刈(1:24)△岩木闘空(愛知・大成中)
川口陽生(広島・崇徳中)○払腰(0:41)△坂詰優斗(福島・三春中)
【準決勝】
下地琉仁○内股(0:37)△堂森遥空
岡本煌栄○GS内股すかし(GS0:41)△川口陽生
【決勝】
岡本煌栄○GS僅差(GS3:47)△下地琉仁
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