【試合結果及び戦評】第16回天理杯高等学校柔道大会

記事
  1. ホーム
  2. 記事
  3. 【試合結果及び戦評】第16回天理杯高等学校柔道大会

大会日時:2026(R8)年5月2日 会場:天理大学武道館

文責:穴井隆将(天理大学柔道部 師範)

優勝した埼玉栄高
優勝した埼玉栄高

これまで3月末に行われていた「天理杯高等学校柔道大会」は、全国高等学校柔道選手権大会の日程変更に伴い、今回から5月のゴールデンウィーク開催となった。

大会には主催者が選抜した20校を招待。試合方式は学年別6人制団体戦、エントリーは1年生2名・2年生3名・3年生4名を登録、その中から1年生1名・2年生枠2名・3年生枠3名(上の学年に出場させることは可能)を選出することとした。加えて、全試合の対戦前にどの学年から開始するか(2番目の学年・3番目の学年の順番)を決定する抽選をした。高校生が試合の流れを汲んで、置かれている状況の中で状況を打開する力を養うことがその目的である。
 各校がインターハイの都道府県予選を控えるため単なる探り合いにならぬよう、また新入生も含めた「試行期間」であることの2点を考慮した大会として、各校の監督にご理解いただけたとすれば、主催者としても幸いである。

4校1ブロックに振り分けられた予選リーグは、大成高校を第1シードに、続いて天理高校が第2シード、埼玉栄高校(第3シード)、神港学園高校(第4シード)、旭川龍谷高校(第5シード)と配された。各ブロックは激戦で、シード校のうち1位で通過できたのは大成高校と埼玉栄高校のみ。天理高校は福井工業大学附属福井高校に敗れ2位通過、神港学園高校も加藤学園高校に、旭川龍谷高校も名張高校に惜敗し2位通過となった。対戦直前で配列抽選を行うことや、各試合で1学年上への選出可能というレギュレーションの妙味が絶妙に機能し、惜しくも予選リーグで敗退したチームも含め、各校の監督の采配は見応えのあるものが多かった。

予選リーグの上位2校(合計10校)による決勝トーナメントは、抽選によって組み合わせが決められた。予選リーグの順位は以下の通り。

【予選リーグ順位】
(予選A組)
第1位 大成高校(愛知県)
第2位 育英高校(兵庫県)
第3位 奈良県選抜(天理高校以外の奈良県混成チーム)
第4位 不二越工業高校(富山県)

(予選B組)
第1位 福井工業大学附属福井高校(福井県)
第2位 天理高校(奈良県)
第3位 岡豊高校(高知県)
第4位 大阪商業大学高校(大阪府)

(予選C組)
第1位 埼玉栄高校(埼玉県)
第2位 神戸国際大学附属高校(兵庫県)
第3位 比叡山高校(滋賀県)
第4位 中京高校(岐阜県)

(予選D組)
第1位 加藤学園高校(静岡県)
第2位 神港学園高校(兵庫県)
第3位 東北高校(宮城県)
第4位 初芝橋本高校(和歌山県)

(予選E組)
第1位 名張高校(三重県)
第2位 旭川龍谷高校(北海道)
第3位 京都先端科学大学附属高校(京都府)
第4位 上宮高校(大阪府)

決勝トーナメントの抽選は、予選A~D組の1位を四つ角に配し、E組1位の名張高校はフリー抽選。その結果、名張は第1シード配下の小さい山に配置された。よってA,D,Eの2位は右ゾーン、B,Cの2位は左ゾーンのそれぞれ空いているところを抽選することとなった。

決勝トーナメント1回戦は、神戸国際大学附属高校が2年生枠で2点を挙げ、ここまで好調だった名張高校を2対0で完封。敗れた名張高校は今大会台風の目。稽古で鍛え上げられた様子が窺える、粘り強い戦いを見せた。柔道のスケール大きな1年生・谷本智紀が入学が将来性を垣間見せるなど、この先3年間が楽しみなチーム。夏までにさらに強くなると期待出来る。

もう一つの決勝トーナメント1回戦は育英高校が旭川龍谷高校を2対2の内容差で辛くも振り切った。育英高校は、今大会絶好調の2年生・新島翔空の一本勝ちが大きかった。旭川龍谷高校は副将の葛西樹生、大将の井嶋行誠が気持ちを前面に出して追いかけるも、あと一歩及ばず。しかし、勝負に対する執念は目を見張るものがあった。春の高校選手権でも大成高校に惜敗と存在感があった。夏の挽回に期待したい。

これで、準々決勝戦のカードが出揃った。①大成高校 – 神戸国際大学附属高校、②加藤学園高校 – 天理高校、③福井工業大学附属福井高校 – 育英高校、④埼玉栄高校 – 神港学園高校。

以下、惜しくも準々決勝戦で敗退した4校を順に評したい。神戸国際大学附属高校は2年生が得点源のチーム。特に平良は超重量級ながら、身体バランスの良さと柔軟性は抜群。来年度は久しぶりに全国の舞台で大暴れが期待できるチームである。

天理高校は少し元気がなかった。先日の強化選手選考会90㎏級で優勝した世界カデ代表の髙橋大輔がポイントを挙げられなかった。3年生の奮起が夏の結果に影響することは明白で、再登板となった齋藤涼監督の手腕にも期待する。

育英高校は大型選手も揃い、面白いチームだった。特に前述の新島翔空は技のキレ、勘の良さに観客の注目が集まった。夏はライバル神港学園を破り、インターハイにたどり着くことができるか注目したい。

最後に神港学園高校。近年、激戦区兵庫県を何度も制し安定的な力を持っているチーム。敗れた埼玉栄高校戦でも最後まで接戦を演じ、実力伯仲の展開を繰り広、兵庫県チャンピオンの意地を感じさせた。山本竜也監督の各選手の特性を見極めた指導も光り、各々が自分の個性を発揮している印象があった。この夏全国の舞台で活躍することを期待する。

準決勝戦の対戦カードは①大成高校 ― 加藤学園高校(3年生枠→2年生枠→1年生の順)、②福井工業大学附属福井高校 ― 埼玉栄高校(1年生→3年生枠→2年生枠の順)となった。優勝候補の大成、埼玉栄に伏兵の加藤学園、福井工大が挑戦する形だ。

準決勝戦第1試合は、東海地区勢同士の対戦となった。大成高校は大会前に3年生のエース𠮷田征矢をエントリーから外しており、この試合でも2年生枠にエントリーしていた岩崎康汰朗を3年生枠に起用。しかし、加藤学園高校はこのオーダーを読み当てたか、エースの田崎真巴を3年生1番手に起用。結果は田崎が内股で一本勝ち。その後お互いに有効のスコアによる優勢勝ちを1つずつ重ねるも、加藤学園高校が2‐1で勝利を果たした。大成高校はベストコンディションではなかったものの、地力のある戦いを見せてくれた。1年生にも大型重量級選手2人を登録・起用するなど、インターハイに向けていろいろと策を練っているようであった。夏のインターハイ、悲願の優勝に向けて期待したい。

続く準決勝戦第2試合は埼玉栄高校が圧倒。今大会、2年生ながらエントリー段階から3年生枠に登録された岡本煌栄の内股一本をテコに、続く小松大峨も小内刈で一本勝ち。前衛3人で2点を挙げた。逆転を期す福井工大高校は、エース藤本翔稀に託すも引き分け。大将戦では、3月の強化選手選考会100㎏級で2位に入った新井月堂にダメ押しの1点を加えられ、終わってみれば3‐0。埼玉栄高校の完封勝ちとなった。福井工業大学附属福井高校は、2年生の田中雄大が光った。準決勝戦こそ敗れたものの、予選リーグ天理高校戦での勝利は大きな1点であった。力強い組み手や技が、魅力的であった。

結果、決勝は加藤学園高校 ― 埼玉栄高校の顔合わせとなった。試合前抽選の結果、配列は3年生枠→1年生→2年生枠の順となった。埼玉栄高校は3年生枠でエントリーしている岡本煌栄、1年生ながら全試合2年生枠に出場している渡邉翔太の布陣はそのまま。対する加藤学園高校は3年生枠に自信を持っており、前衛で最低2ポイントは挙げて後衛に繋げたいところ。しかし、前衛3人は全試合引き分け。両校ともに高校生離れした巧みな組手と技出しの早さに会場中が息をのんだ。緊迫感あふれる試合に風穴をあけたのは1年生。埼玉栄高校の星野将大が大外刈で見事な一本勝ち、貴重な先制点を挙げた。副将戦で加藤学園高校も藤井心人が意地の出足払で技ありを奪うも、内容差で追いつくまでには至らず。大将戦も埼玉栄高校の新井月堂がしっかり試合をクローズ。そのまま優勝を決めた。

敗れた加藤学園高校は、主催者の戦前予想を大きく上回る、殊勲の準優勝。特に3年生の田崎真巴、杉下想明の強さと、2年生原田竜惺の技のキレはひときわ注目を浴びていた。他の選手もよく鍛え上げられ、春の高校選手権の戦いからさらに一段層強くなっている印象がある。この大会でつけた自信を、ぜひ夏に向けて発揮して欲しい。

優勝した埼玉栄高校は圧巻だった。登録段階から今大会の趣旨をよく咀嚼した、まさに「夏に向けた強化仕様」のエントリーだった。1学年上で起用された岡本煌栄と渡邉翔太は、強豪チームの上級生を相手にしてまったく遜色ない、むしろ強さ際立つ内容であった。今大会を通じてさらに自信を深めたことだろう。1年生の星野将大、2年生の新井月堂、3年生の中山龍人ら脇を固める布陣にも層の厚さを感じる。春の高校選手権で悔しい思いをした小林大輔新監督の、夏に期する思いも強いであろう。今大会の優勝を弾みに、大舞台での活躍を期待したい。

柔道の大会は近年、スケジュールの変化などの影響を受け、アップデートを求められ続けている状況にある。天理柔道会は、今後も柔道界の先駆的な役割を果たしていけるよう、様々なアイデアの中で大会を発展させていきたいと考えている。今回の大会が、出場された高校生をはじめ、皆様方の今後の強化の一助となったのであれば本望である。終わりに、主催者として大きな事故や怪我無く終えられたことに対し、出場いただいた高校の監督、選手、保護者の皆様、開催にあたりご尽力いただいた関係各位、学生実行委員会の学生に対し、心より厚く御礼申し上げ筆を置く。(了)

成績上位者

(エントリー20校)
優 勝:埼玉栄高(埼玉)
準優勝:加藤学園高(静岡)
第三位:福井工大福井高(福井)、大成高(愛知)

加藤学園高
準優勝の加藤学園高
第3位の福井工大福井高
第3位の福井工大福井高
第3位の大成高
第3位の大成高

試合結果

決勝トーナメント1回戦

神戸国際大付高 ②-2 名張高
(先)平良健成○内股(1:51)△畠虎次郎
(次)⾧澤篤武○崩袈裟固(1:09)△宮崎智樹
(四)ツォルモンバータルツブシンバヤル×引分×広瀬瑠海
(三)宮島克徳×引分×大坪星之介
(副)江川元基×引分×西畑聖
(大)崎濱良道×引分×谷本智紀

育英高 ②-2 旭川龍谷高
(先)岡本真虎△反則[DH](1:51)○田中烈
※立ち姿勢から腕挫腋固の形で体を捨てたことによる
(次)新島翔空○内股(1:09)△安藤亜斗夢
(四)デュセン充瑠×引分×松浦誠太
(三)杉山真裕○優勢[有効・払腰]△中根蒼悟
(副)下村龍輝×引分×葛西樹生
(大)三好斗真△優勢[僅差]○井嶋行誠

準々決勝

大成高 1-0 神戸国際大付高
(先)井上勇希×引分×崎濱良道
(次)芳森向隼×引分×平良健成
(四)岩崎康汰朗×引分×⾧澤篤武
(三)水道啓人×引分×ツォルモンバータルツブシンバヤル
(副)栗栖秀忠×引分×宮島克徳
(大)岡本千太朗○袈裟固(1:21)△江川元基

福井工大福井高 ②代-2 育英高
(先)藤本翔稀×引分×杉山真裕
(次)早瀬澄人△優勢[僅差]○下村龍輝
(四)田中雄大○内股(1:45)△三好斗真
(三)宮川悠斗○優勢[僅差]△岡本真虎
(副)バトツァガーンバトスレン△払腰(2:36)○新島翔空
(大)河合惺空×引分×デュセン充瑠
(代)藤本翔稀○小外掛(0:38)△杉山真裕

加藤学園高 2-0 天理高
(先)原田竜惺○優勢[技あり・体落]△菅原澄空
(次)諸橋隼太×引分×寺中潤志
(四)杉下想明×引分×髙橋大輔
(三)田崎真巴○優勢[技あり・肩車]△中川龍ノ助
(副)山口楽斗×引分×嶋羽優人
(大)倉持佑月×引分×齋藤孝仁

埼玉栄高 3-1 神港学園高
(先)星野将大×引分×金相暉
(次)岡本煌栄○袈裟固(2:23)△千葉柊吾
(四)小松大峨×引分×初世大真
(三)中山龍人△袈裟固(1:46)○李在胤
(副)渡邉翔太○内股(2:25)△山澤乙輝
(大)新井月堂○送襟絞(0:36)△三隅朔久

準決勝

加藤学園高 2-1 大成高
(先)田崎真巴○内股(1:28)△岩崎康汰朗
(次)杉下想明○優勢[有効・払巻込]△池田大琉
(四)山口楽斗×引分×岡本千太朗
(三)原田竜惺×引分×芳森向隼
(副)諸橋隼太×引分×井上祐輔
(大)倉持佑月△優勢[有効・大腰]○栗栖智義

福井工大福井高 3-0 埼玉栄高
(先)星野将大×引分×宮川悠斗
(次)岡本煌栄○内股(1:20)△河合惺空
(四)小松大峨○小内刈(2:20)△バトツァガーンバトスレン
(三)中山龍人×引分×藤本翔稀
(副)渡邉翔太×引分×早瀬澄人
(大)新井月堂○合技[隅落・崩袈裟固](2:40)△田中雄大

決勝

埼玉栄高 ①-1 加藤学園高
(先)岡本煌栄×引分×山口楽斗
(次)小松大峨×引分×田崎真巴
(四)中山龍人×引分×杉下想明
(三)星野将大○大外刈(1:14)△倉持佑月
(副)渡邉翔太△優勢[技あり・出足払]○藤井心人
(大)新井月堂×引分×原田竜惺

スポンサーリンク