学生柔道界冬の一大イベント、「全日本学生柔道 Winter Challenge Tournament 2024」(17日~18日、天理大学杣之内第一体育館)の開催がいよいよ今週末に迫った。1988年に創設され、強豪大学の新人戦的位置づけで盛況だった「全国体育系学生柔道体重別選手権大会」が、2年前に大会名を変えてリニューアル。これまでの体育系大学・学部限定から出場枠が広げられ、全国の強豪大学がこぞって選手を送り込むメガトーナメントに進化した。規模拡大につれて当然ながら競技レベルも上がり、昨年度は100kg超級の酒井晃輝(天理大)と90kg級の藤永龍太郎(国士舘大)が今大会の優勝をきっかけに当年の学生王座を獲得。「メジャーへの登竜門」感もさらに上がっている。
運営が学生主体であること、文武両道を標榜して研修会を開催すること(出場大学にはポスター発表が課せられる)など今大会の特徴は多々あるが、競技で言えば、組み合わせ抽選が大会直前であることが面白い。IJFワールドツアーを意識したこの措置により、事前研究の時間がほとんどない。選手には正味の「柔道力」自体と、幅広い対応力が求められることになる。
この魅力的な大会の、全7階級の様相を展望してみたい。2024年大会の参加選手は1月19日の1次エントリー時点で702人。前述の通りまだ組み合わせは出ていないのだが、エントリーリストをもとに、大会組織委員の方々に各階級のみどころを語って頂いた。
監修:eJudo編集部
※展望は1/19の1次エントリー時の情報に基づいています
60kg級 辻岡慶次と松永烈がV候補2強、田中克樹らが後を追う
(エントリー90名)
優勝候補は辻岡慶次(東海大3年)と松永烈(国士舘大1年)の二人。ともに2023年の結果こそ振るわなかったものの、過去の実績を鑑みれば抜きんでた存在だ。熾烈な優勝争いが期待される。
この二人を追うのが、関西学生2位の田中克樹(天理大2年)。講道館杯では、全日本学生3位で昨年本大会3位の南太陽(日本文理大2年)に快勝している。地元関西の声援を後押しに優勝争いに絡めるか。
昨年本大会5位の宮部真臣(國學院大2年)、7位の山口心(清和大2年)、全日本学生ベスト16の増田神(帝京科学大3年)、昨年本大会ベスト16の金井拓真(鹿屋体育大2年)、山口樹希弥(明治大3年)、山本善也(桐蔭横浜大3年)らの戦いにも注目したい。
この階級には実に90名がエントリー。優勝まで最大8試合という壮絶なメガトーナメントは、シード選手が圧倒的有利にみえる。しかし、勝ち上がり方次第では勢いに乗った選手がそのまま頂点に躍り出る可能性も十分。”Winter Challenge”の名に相応しい、学生たちの「挑戦」する試合に期待したい。
(三宅恵介)
【シード候補選手】(大会組織委員会選定)
辻岡慶次(東海大3年)、松永烈(国士舘大1年)、田中克輝(天理大3年)、宮部真臣(國學院大2年)
山口心(清和大2年)、増田神(帝京科学大3年)、山本義也(桐蔭横浜大3年)、山口樹希弥(明治大3年)、金井拓真(鹿屋体育大2年)
66kg級 超激戦階級で越知世成が2連覇狙う、追撃者は平山舞人、顕徳海利ら
(エントリー118名)
昨年の本大会、粘り強い寝技を武器に1年生で一気に頂点へ駆けあがった越知世成(桐蔭横浜大2年)が第 1 シード。周囲のマークは必至だが、昨年同様勢いに乗れば2連覇も十分視野に入る。
対抗は2022年全日本ジュニア優勝の平山舞人(明治大3年)、2022年高校春夏二冠の顕徳海利(天理大1年)か。平山は激しい攻撃柔道が魅力で競り合いにも強い。自分の柔道に徹してジュニアの再現を目指す。顕徳は内股に切れがあり大舞台の経験も十分。勝ち方を知る者の強みを発揮できるか。
昨年本大会5位の幸田朗(帝京科学大3年)は 2023 年全日本ジュニアでも 5 位に入るなど安定感抜群。実力者の永松優吾(清和大2年)は怪我から復調傾向にあり。再起のきっかけとしたい。また、長年66kg級の実力者を輩出してきた國學院大から井桁拓海(3年)、近年成長が著しい帝京平成大からは秋山悟大(1年)、さらには昨年本大会 7 位の秋田伯(天理大2年)と佐藤尚貴(日本大2年)、変則柔道の志村洸太(専修大3年)も隅返の一発があり虎視眈々と上位を狙う。2023 年60kg級学生王者の白金宏都(筑波大2 年)はトライアルとして1階級上げてのエントリー。Winter Challenge の名に相応しいそれぞれのチャレンジに注目だ。
(廣川充志)
【シード候補選手】(大会組織委員会選定)
越知世成(桐蔭横浜大2年)、平山舞人(明治大3年)、顕徳海利(天理大1年)、幸田朗(帝京科学大3年)
秋田伯(天理大2年)、佐藤尚貴(日本大2年)、永松優吾(清和大2年)
井桁拓海(國學院大3年)、志村洸太(専修大3年)、秋山悟大(帝京平成大1年)、住谷蓮(日本大2年)
73kg級 鎌倉啓太郎がV候補筆頭、技の切れ味ある花岡晴琉・優勝大会大暴れの小田桐美生にも注目
(エントリー122名)
面白い選手が揃った。優勝候補筆頭は、鎌倉啓太郎(専修大1年)。講道館杯で第一シードの大吉賢(SBC湘南美容クリニック)に勝利を収めるなど、今回のメンバーでは頭一つ抜けた存在だ。変則的な組み手から繰り出す捨身技と、習志野高で培った脅威の寝技に周囲の選手がどれだけ対応できるか。
対抗馬は花岡晴琉(筑波大2年)、小田桐美生(国士舘大3年)といったところか。花岡は体重別団体でチームの優勝に大きく貢献する「一本」を奪うなど、内股のキレに定評がある。安定感が備わっていれば一気に優勝もある。小田桐は6月の優勝大会で大暴れした選手。大きな相手に強い印象があるが、同階級での戦い方に注目したい。更に、全日本ジュニア3位の宮下真八(大阪教育大2年)、大久保竜希(東海大2年)がどれだけ戦えるかにも注目。宮下は勝負どころで勝ち切る勘の良さを持つ選手。地元関西での声援を力に上位進出を目指してほしい。
他にも、滝本大翔(東海大2年)、松本開登(順天堂大1年)、鈴木孝太朗(帝京大1年)など、一撃必殺の技をストロングポイントとする選手が揃った。
ただし、常に予想通りにいかないのがこの73kg級。ここに挙げた以外の選手が勢いで勝ち上がる可能性も十分にある。熱戦に期待したい。
【シード候補選手】(大会組織委員会選定)
鎌倉啓太郎(専修大1年)、花岡晴琉(筑波大2年)、小田桐美生(国士舘大3年)、宮下真八(大教大2年)
大久保竜希(東海大2年)、滝本大翔(東海大2年)、松本開登(順天堂大1年)、鈴木孝太朗(帝京大1年)
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