寄稿:主催者
編集:eJudo編集部
前身が旧商科大学であった一橋大学、神戸大学、大阪公立大学による対抗戦、「旧三商大柔道大会」が、11月23日に大阪公立大学において開催された。
大会は1931(昭和6)年に創設。第二次世界大戦のため一旦幕を閉じたが、1953(昭和28年)に旧三商大柔道大会として復活し、今年で72回目を迎えることとなった。
試合形式は15人制勝ち抜きの団体戦。ルールは講道館試合審判規定がルーツ、立技・寝技両方を生かすことを目指して、「勝敗を決するのは技有、警告以上」「効果ある引き込みは認め、寝技を長くみる」ことと定めている。
対抗戦レポート
第1試合は一橋大が神戸大に5人残しで勝利。第2試合は大阪公立大が神戸大を3人残しで下し、初戦を勝利した両校によって優勝決定戦が争われることとなった。
【優勝決定戦】
一橋大学〇五人残し△大阪公立大
(三鋒)須藤雄祐×引分×中川太介(三鋒)
(四鋒)堀部薫△大外刈◯喜多航之助(四鋒)
(五鋒)長谷川嵩◯縦四方固喜多航之助(四鋒)
(五鋒)長谷川嵩△袈裟固◯中崎颯(五鋒)
(六鋒)ユライパブロビッチ◯背負投△中崎颯(五鋒)
(六鋒)ユライパブロビッチ大腰◯西村龍汰(六鋒)
(七鋒)足立晴◯送襟絞△西村龍汰(六鋒)
(七鋒)足立晴◯横四方固△武田優飛(七鋒)
(七鋒)足立晴◯合技△當山賢(中堅)
(七鋒)足立晴△合技◯若林誠彦(七将)
(中堅)大石恒介△反則◯若林誠彦(七将)
(七将)藤田祐太郎△横四方固◯若林誠彦(七将)
(六将)西岡海凪◯大外刈△若林誠彦(七将)
(六将)西岡海凪◯小外刈△濱田八哉斗(六将)
(六将)西岡海凪◯裏投△田中照英(五将)
(六将)西岡海凪◯大外刈△川崎育海(四将)
(六将)西岡海凪◯優勢△奥琉登(三将)
(六将)西岡海凪◯上四方固△山口優真(副将)
(六将)西岡海凪小外刈◯中尾柊平(大将)
(五将)根川慧◯合技△中尾柊平(副将)
(四将)森本敢介
(三将)斉藤颯
(副将)古川直
(副将)多田壮志
14年振りの優勝を目指す大阪公立大学と、連覇を狙う一橋大学の対戦。ともにフルメンバーである15人には2人足りず、13人編成での対決となった。
前半は抜きつ抜かれつの好試合が続いたが、傾きが生まれたのは六鋒同士による第6試合。大阪公立大は天理高出身の試合巧者西村龍汰、一橋大は前戦を一本勝ちしている留学生ユライ・パブロビッチが畳に立つ。立って寝て激しい攻防が続いたこの試合は、最後に西村が見事な大腰を決めて一本勝ち。前半の流れは大阪公立大の側にあり。
しかしここで一橋大学は主将の足立晴が登場。西村から挙げた送襟絞「一本」を皮切りに3人を抜き返し、大阪公立大の絶対的エース・若林誠彦を畳に引き出す。若林は落ち着いて、疲れの見える足立からまず合技「一本」、さらには大石恒介、藤田祐太郎と計3人を抜き返す。スコアは1人差で、大阪公立大がリード。
ここで一橋大学は、満を持してエースの六将・西岡海凪が登場。期待通りの快進撃を見せる。まずは畳に残った若林から得意の大外刈で一本勝ち。その後も次々と「一本」を重ねて、実に6人を抜き去る。後がなくなった大阪公立大は大将に座る主将・中尾柊平が小外刈「一本」で一矢を報いたが、一橋大学は続いて畳に上がったポイントゲッターの根川慧が落ち着いた戦いぶり。合技「一本」で試合を終わらせた。
実力ある選手を後衛に配した一橋大学に凱歌。5人残しで勝利を収め、2年連続の優勝杯を獲得することとなった。大阪公立大は12年ぶりの準優勝。
優勝決定戦における引き分けは1試合のみ。反則での優劣がつけがたいルールであることもあり、試合展開は常に「取るか取られるか」。見応えのある戦いだった。
死力を尽くして闘い抜いた両校の選手には、各大学のOBや関係者で埋め尽くされた客席から拍手喝采。場内に称賛の声が響き渡った。
女子団体戦・OB親善試合
神戸大学 2-1 大阪公立大学
(先)粂田羽那△横四方固〇木村さくら
(中)中野穂乃果〇横四方固△福谷悠
(大)小谷麗奈〇後袈裟固△北川真衣
男子の試合後は、新たな試みとして女子団体戦が行われた。
神戸大学と大阪公立大学は年々女子の部員が増えており、これを受けての企画。「三商大ルール」を採用し、三人戦で行われた試合は大阪公立大学の先鋒の木村が先取。神戸大学は中堅、大将で中野、小谷が取り返し、逆転で神戸大学の勝利となった。今回は2校での開催だったが、3校揃っての女子団体戦が出来ればさらにこの大会の発展が望めるはずだ。
毎年恒例のOB親善試合は一気に会場が和やかになり、かつての名選手達の繰り出す技に歓声とどよめき、笑いがこぼれた。生涯柔道を推奨するという意味でも重要な取り組みである。
「自他共栄の精神」
「試合」のみで終わらないのも旧三商大戦の魅力である。勝者はメンバー全員で優勝を称え合い、敗者は仲間と来年以降の優勝を誓い合う。選手だけでなく応援しているOB達も同じ気持ちである。今年も試合終了後には三大学合同の懇親会が持たれ、お互いの健闘を称え合い、エールを交換、最後に部歌斉唱で大会は幕となった。近年の大会では、この対抗戦がより多くの方々の心に響く大会になるようにと、各大学のOB会の協力のもとYouTube配信も行われている。長い歴史を誇るこの大会が、さらに発展するためにはこの「自他共栄の精神」による交流・協力が欠かせない。協力くださった関係者・OBの方々にこの場を借りて感謝したい。
対抗戦結果・談話
優 勝:一橋大学
準優勝:大阪公立大学
第三位:神戸大学
【第1試合】一橋大学○五人残し△神戸大学
【第2試合】大阪公立大学〇三人残し△神戸大学
【優勝決定戦】一橋大学〇五人残し△大阪公立大学
一橋大学 足立晴主将のコメント
「試合結果を問わず全力で戦った選手、熱のこもった応援を下さった先輩方、そして我々を見守り、ご指導いただいた先生方、どれか一つでも欠けていたら、きっと結果は違ったと思います。昨年よりも人数が少ない中で、今まで以上に選手一人一人が役割を全うできたことが優勝につながったと思います。旧三商大戦に関わった全ての皆様に御礼申し上げます」
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