グランドスラム・パリ男子日本代表選手の採点表と評をお届けする。評価にあたってもっとも重視するのは常の通り、己の持てる力を発揮出来たかどうか。
採点に先んじて。審判に関して一言。前週のGPポルトガルと併せて今の時点で感じた新たな傾向をメモしておく。
1つ目は「立ち姿勢からの関節技」(のダイレクト反則負け)の厳罰化。2年程時期によってかなり裁定に揺れがあったのだが、この2大会はかなり厳しく取っていた。立ち姿勢からの煽り落しや、一瞬のみの「近い袖を抱えて足車等で振り崩す」行為も厳しく反則負けと判定。70kg級の田中志歩もこれで敗れてしまった。ただし、逆に袖釣込腰などは「実際に極まる可能性が高い形かどうか」をかなり見極めていたので、一概に「厳罰化」とは言い切れない。
もう1つはほぼ腹ばい状態で落ちたと見られた「技有」が宣されるケース。例えば57kg級3位決定戦、ジェシカ・クリムカイトがノラ・ジャコヴァから背負投で奪った「技有」など。実は両大会通じて結構な数、こういうケースがあった。旧来の「90度接地」基準に照らしてこれを「技有」とするのは難しい。おそらく1月のルールセミナーで決まったことがあるのだろうが、主要なものについては明文化してもらいたいところだ。
文責:古田英毅・eJudo編集部
60kg級
中村太樹(国士舘大3年) 5.5
成績:3位
強い。進退もいい意味でふてぶてしく安定。常に寝技で圧を掛けるスタイルもモダンで、もっかのワールドツアーの一線と息が出来ている。世界王者のガリーゴスに敗れたという結果はチャレンジとして一種健全なアウトプットで、少なくとも減点の対象にはならない。派遣の責は果たしたと言える。五輪2位のヤン・ユンウェイにはこれで2連勝。挙げた首級と本人の若さからすれば6.0相当であるが、中村は既に実績十分の選手。ここは斟酌なしに、シニアのトップ選手目線で採点してこの点とした。1つ気になったのは、抱き勝負属性を強めているガリーゴスに対し、決して己の戦型ではない「背中横抱き」を選択して取られたこと。グランドスラム東京で髙藤直寿に、これも決して己の勝負技というわけではない内股を透かされて敗れたことが思い起こされた。追い詰められた時に、安易に相手の土俵に上がってしまう傾向があるのではないか。採点にはこの部分は含まなかったが、次回への糧として欲しい。
66kg級
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