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パリ五輪の金メダル最有力と目されるヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)を筆頭に、現役世界王者のニルス・ストンプ(スイス)、ムロジョン・ユルドシェフ(ウズベキスタン)、ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)、ダニエル・カルグニン(ブラジル)、マフマドベク・マフマドベコフ(中立選手団)、アディル・オスマノフ(モルドバ)、そして石原樹(JESグループ)と、階級のトップ層が大勢参戦。橋本壮市(パーク24)、マヌエル・ロンバルド(イタリア)、ダニル・ラヴレンテフ(中立選手団)ら主役級の欠場もあるものの、世界一を決めるのに十分なメンバーが揃った。
優勝候補はヘイダロフ。昨年末のヨーロッパオープン選手権での3位という成績はあるものの、主要タイトルでは5連勝中と、競り合いを続ける上位集団から頭一つ抜けている。今大会は五輪で優勝候補を名乗る資格があるかの最終試験。果たしてこの階級が混戦のまま五輪を迎えるのか、それともヘイダロフという軸ができるのか、パリ五輪の様相を占う意味でも重要な大会だ。
日本代表の石原は、ヘイダロフの対抗馬の一人という位置づけ。実力的には十分頂点に手が届く位置につけている。最初の山場は2回戦のアルチュール・マルジェリドン(カナダ)戦。まずはこの試合を良い内容で制し、勢いをつけたい。
有力選手の配置、各プールのひとこと展望は下記。
【プールA】
第1シード:ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
有力選手:アキル・ジャコヴァ(コソボ)、サルバドール・カセス=ロカ(スペイン)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)の勝ち上がりが濃厚。ただし、初戦(2回戦)にアキル・ジャコヴァ(コソボ)、3回戦にサルバドール・カセス=ロカ(スペイン)と、難敵2人との対戦が組まれている。特にジャコヴァは昨年末のヨーロッパオープン選手権で土をつけられた因縁の相手だ。力的にはヘイダロフの勝ち上がりで堅いと思われるが、初戦ということもあり、躓くとすればこの試合になるはず。リアルタイムでチェックしたい。
第8シード:ダニエル・カルグニン(ブラジル)
有力選手:ギオルギ・テラシヴィリ(ジョージア)、ジョアン=ベンジャマン・ガバ(フランス)、オタリ・クヴァンティゼ(ポルトガル)、ウマルト・デミレル(トルコ)、マヌエル・パルラーティ(イタリア)
ジョアン=ベンジャマン・ガバ(フランス)の勝ち上がりと予想。実績的にはダニエル・カルグニン(ブラジル)を推すべきだが、昨年後半に怪我から復帰して以降は、まだ本調子と言えるパフォーマンスは見せていない。一方、ガバは母国開催の五輪に向けて調子を上げてきており、先月のヨーロッパ選手権では好内容で3位を獲得している。1回戦でギオルギ・テラシヴィリ(ジョージア)、2回戦でカルグニンと厳しい組み合わせながら、ベスト8まで勝ち上がる力はあるはずだ。
準々決勝の予想カードは、ヘイダロフvsガバ。この試合はヘイダロフの勝利が濃厚。ガバは「ガチャ押し」の耐久型だが、このフィールドではヘイダロフが一段上だ。また、3回戦までの組み合わせもガバの方が重く、かつ柔道スタイルが常に動き回る燃費の悪いものであるため、このラウンドに辿り着く頃には息切れを起こしているはず。
【プールB】
第4シード:ムロジョン・ユルドシェフ(ウズベキスタン)
有力選手:カリム・アブドゥラエフ(アラブ首長国連邦)、ルスラン・ハラヴァチョウ(中立選手団)、イ・ウンキュル(韓国)、イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)、バヒトジャン・アブドゥラフマノフ(カザフスタン)
ムロジョン・ユルドシェフ(ウズベキスタン)の勝ち上がりが確定的。対戦相手の中に伍する相手はいない。
第5シード:ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)
有力選手:バットザヤ・エルデネバヤル(モンゴル)、ペトル・ペリヴァン(モルドバ)、マルティン・ホヤック(スロベニア)、マルク・フリストフ(ブルガリア)
ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)の勝ち上がりと予想する。初戦(2回戦)の相手に好選手ペトル・ペリヴァン(モルドバ)が配されているが、この選手は最近明らかに不調。ホジャゾダが序列どおりにベスト8へと勝ち上がるはず。
準々決勝の予想カードは、ユルドシェフvsホジャゾダ。この試合はユルドシェフの勝利と予想する。ホジャゾダの主戦場は絞り合いだが、このフィールドはユルドシェフも得意としており、力の差がそのまま結果に反映されるはず。
【プールC】
第2シード:シャフラム・アハドフ(ウズベキスタン)
有力選手:アダム・ストドルスキ(ポーランド)、アルチュール・マルジェリドン(カナダ)、ホルヘ・カノ=ガルシア(スペイン)
日本代表選手:石原樹(JESグループ)
石原樹(JESグループ)の勝ち上がりと予想。2回戦でアルチュール・マルジェリドン(カナダ)、3回戦でシャフラム・アハドフ(ウズベキスタン)と厳しい組み合わせだが、実力、勢いともに石原が頭一つ抜けている。マルジェリドンは潜り技や返し技も得意としている曲者のため、組み際や技の仕掛け終わりには特に注意しながら戦いたい。一方、アハドフは柔道自体は正統派だが、組み手は左右が利く両組み。これに惑わされることなく、積極的な攻めで流れを掴みたい。
第7シード:マフマドベク・マフマドベコフ(中立選手団)
有力選手:ジャック・ヨネヅカ(アメリカ)、ヴァルッテリ・オリン(フィンランド)、ジルベルト・カルドソ(メキシコ)、アディル・オスマノフ(モルドバ)、ダニヤル・シャムシャエフ(カザフスタン)
アディル・オスマノフ(モルドバ)の勝ち上がりと予想。2回戦でダニヤル・シャムシャエフ(カザフスタン)、3回戦でマフマドベク・マフマドベコフ(中立選手団)と強豪との連戦が組まれているが、3月以降のタフな戦いぶりからすれば、この選手の勝ち上がりが妥当。一方、マフマドベコフは明らかに調子を落としており、好調のオスマノフに勝利するのは難しいはずだ。
準々決勝の予想カードは、石原vsオスマノフ。この試合は石原の勝利と予想。オスマノフはどちらかというと耐久型だが、石原の攻撃力が勝るはず。オスマノフは多彩な選手だが、石原が危ないとすれば組み際の低い右大外落と右大内刈、伏せ際、もつれ際の返し技くらい。早く組み手を完成してしまい、相手にチャンスを与えないようにしたい。
【プールD】
第3シード:ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)
有力選手:ラフジャルガル・アンフザヤ(モンゴル)、アレクサンドル・ライク(ルーマニア)、ビラル・ジログル(トルコ)
ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)の勝ち上がりが確定的。対抗馬になるような選手はいない。
第6シード:ニルス・ストンプ(スイス)
有力選手:ジョヴァンニ・エスポージト(イタリア)、キム・チョルグァン(北朝鮮)、メッサウ=ヘドゥアン・ドリス(アルジェリア)
ニルス・ストンプ(スイス)の勝ち上がり濃厚。対戦相手は初戦(2回戦)でジョヴァンニ・エスポージト(イタリア)とキム・チョルグァン(北朝鮮)の勝者、3回戦でメッサウ=ヘドゥアン・ドリス(アルジェリア)と決して楽ではないが、力の差があるため敗れることはないはず。
準々決勝の予想カードは、シャヴダトゥアシヴィリvsストンプ。この試合はシャヴダトゥアシヴィリの勝利と予想する。組み合わせがストンプの方が重く、かつ怪我から復帰してから日が浅い。順調に復調してはいるものの、まだシャヴダトゥアシヴィリを凌ぐまでは戻せていないはずだ。
【準決勝~決勝】
準決勝の予想カードは以下のとおり。
ヘイダロフvsユルドシェフ
石原vsシャヴダトゥアシヴィリ
ヘイダロフとユルドシェフは、ヘイダロフの勝利と予想する。ユルドシェフはスタミナに難があるため、後半になるほどヘイダロフが有利。ユルドシェフの技構成でヘイダロフから早期にポイントを奪うことは困難と思われ、ヘイダロフが削り勝つはずだ。
石原とシャヴダトゥアシヴィリは、石原の勝利が濃厚。抱き勝負と足技には注意が必要だが、逆に言えばそれ以外にシャヴダトゥアシヴィリに勝ち筋はない。
決勝の予想カードは、ヘイダロフvs石原。この試合はヘイダロフが有利。投げが武器の石原と耐久型のヘイダロフでは相性が悪く、寝技の練度もヘイダロフの方が有利と思われる。ただし、スタミナに関しては石原も負けておらず、消耗戦に引き込まれてもそれほど苦しむことはないはずだ。先手攻撃で「指導」を積まれることと、組み際に間合いを詰められることには気をつけつつ、積極的に投げを狙って試合を動かしていきたい。
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