【eJudo’s EYE】あの日あの瞬間を意味づける。阿部詩の蹉跌と「これから」。

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文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

史上最大級のアップセット。阿部詩がケルディヨロワの谷落「一本」に沈んだ。

阿部詩、ディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)ともに右組みの相四つ。阿部が両袖の右袖釣込腰と右内股で矢継ぎ早に攻め、1分24秒にケルディヨロワの側に「指導2」。2分20秒には絞られた袖を利用しての右内股で阿部が「技あり」を得る。しかし残り1分に迫らんとするところで、ケルディヨロワが序盤に1度見せていた、「引き手クロスで釣り手側から抱える」アプローチ。前段と同様、次いで引き手で背を抱える挙に出る。今回は深く抱かれてしまった阿部が嫌って一瞬下がると、その際(きわ)めがけてケルディヨロワが左小外掛。もろとも体を捨てると阿部体ごと吹っ飛んで「一本」。

日本代表が得た金メダル3つを、ひょっとすると超えるインパクト。2024年パリオリンピックを象徴するビッグインシデントであった。しかし、本人が振り返りの発信をまだしていないこともあってか、「あの瞬間」を詳細に分析した稿はいまだない。

ずっと考え続け、どこかで出したいと探り続けていたが、おそらくこれが最後のタイミング。締め切りが来たつもりで書いてみようと思う。あす復帰戦に臨む阿部詩へのエールのつもりだ。

思い出すのも辛いのだが、「負けに不思議の負けなし」。終わってみれば、あの瞬間には阿部詩の「これまで」、そして「これから」が詰まっていた。要素が相互に絡み合っており切り分けが難しいのだが、自分なりにまとめてみたい。相互に絡み合った要素、その掛け算の「項」を順番に挙げていく。

「早く一本取ってしまいたい」振る舞いに見る守備戦型の不足とその自覚

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