【レポート】北陸で初開催、髙藤・新井の「金メダル講師」が世界制した足技を伝授/DaiwaHouse presents 第九回 野村道場

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上越市・謙信公武道館に小中学生約200人が集った

文責:古田英毅

五輪3連覇のレジェンド・野村忠宏氏が主催する柔道イベント「DaiwaHouse presents 第九回 野村道場」(Nextend主催、大和ハウス工業特別協賛)が 3月24日、新潟県上越市の謙信公武道館で開催された。

豪華講師陣が新潟・謙信公武道館に集った。

一流柔道家と子どもたちが、柔道を通して交流を深めるこのイベント。初の北陸開催となる今回の特別講師を務めるのは、東京オリンピックの男子60kg級で金メダルを獲得した髙藤直寿選手と、同女子70kg級金メダルの新井千鶴氏。「憧れの野村さんと一緒に柔道教室が出来る日が来るなんて」と髙藤選手はテンション高めに、新井氏は「こういった活動に参加出来ることが嬉しい」とこの人らしく背筋を伸ばして会場入り。そして“柔道界人気ナンバーワンYoutuber”ドンマイ川端氏が、今回からついに「準レギュラー講師」の肩書を得て参加。今回も「オチ」を担当すべく緩急自在、絶妙の呼吸で金メダリスト3人に絡んだ。

恒例のサーキットトレーニング20秒×10種でアップ

今回は新潟県を中心に、全国から小中学生約200人が参加。イベントは野村氏による「礼節指導」に始まり、ウォーミングアップのランニングを経て恒例の「サーキットトレーニング」10種目へと進む。髙藤選手が先頭を切っての全員ランニングでは野村氏が早くも「しんどい(笑)」と息を上げ、ドンマイ川端氏はサーキット6種目めの「バービー」でフル参加を断念、7種目めの「腕立て伏せ」は“肘を曲げたまま顎だけ上下させる”裏技を披露して乗り切ったが、小中学生はこのくらいの運動は当然と元気一杯。早く金メダリストの教えを受けたいと目を輝かす。

髙藤選手はもっとも得意な小内刈を指導。

待望の技講習は、まず髙藤選手が代名詞の小内刈を教授。「繋ぐ技ではない。“『一本』取れる小内刈”と覚えてください」と宣言して子どもたちの心を一気に掴むと、「踵の斜め後ろに踵を引っ掛ける」「払わずに押し付ける」という”髙藤小内“最大の勘どころはもちろん、「絞った両手をこうずらす」「一歩目の膝をしっかり曲げる」と周辺の作りまで丁寧に解説。子どもたちの実技披露に臨んでは「体が丸くなると、どんなに手と足が上手くても相手に力が伝わらない。胸を張って」「継ぎ足の二歩目がもっと近くに入ると威力が増すと思います」と丁寧な指導で「一本」完成の外堀を埋めてやる。子どもたちは「掛かりそう!」と大いに沸いていた。

新井氏の内股披露に歓声があがる

続いて新井氏は、これも代名詞の内股を解説。指導に先んじての得意技投げ込みでこの技を披露すると、子どもたちより先にまず講師陣が感嘆。「すべてが美しい」(髙藤)、「体の軸がしっかりしているから綺麗、投げた後の体勢が崩れない」(野村)と絶賛し、早く解説して欲しいと急かす。披露予定の大内刈と出足払をスキップされそうになった新井氏が「他の技もみせていいですか?(笑)」と自ら申し出る一幕となった。

新井氏は、「世の中には色々な形の内股がある」とまず跳腰型、続いて腰を当ててから内腿を跳ね上げる腰技型の内股を挙げて技術を整理。「私のやり方はこちらです」と、作用足でまっすぐ内腿を跳ね上げる、正調の足技型を指導した。

新井氏の内股は「高く目線を置くことで体勢が安定する」「片足になったときに重心がピタッと載れる位置を探しておく」と、見た目の美しさと技の威力がまっすぐリンクする、子供たちにとって納得しやすい技術。「引き手はたるみがないように握る」「釣り手は鎖骨に自分の小指が上がるように」という「相手と繋がる」作り、そして「綺麗な姿勢で力を伝える」掛け、という2段に分かれたわかりやすい解説だった。

実演を見ると、即座に的確なアドバイス

やり方が明確なこともあって、そして「うまくやろう」という意識もあってか、子どもたちの実技披露は皆スピーディーに決まる。単に褒めるにとどめてもおかしくないところだったが、新井氏は「上手!」とたたえた上で「軸足で一番いい位置を探せばもっと安定するはず」「投げるときに頭が早く降りてしまっている。もう少し我慢してから跳ね上げると威力が上がる」と1度の試技で瞬時に長所と改善点をレビュー。所属と全日本ジュニアチームでコーチを務める指導眼の確かさを早くも発揮していた。

思った以上に相手が飛ぶ、「シンプルな」(新井氏)内股の威力に子どもたちのボルテージは大いに上がった。

野村氏の背負投指導。おんぶのアクティビティで背負投の要諦を解説。

そして指導コーナーの締めは野村氏。まず投げ込みでは、右背負投、追いこんで高く投げる左一本背負投、そしてケンカ四つ時に掛ける軽量級型の右内股と3つの投技を披露した。技の威力自体が凄まじい説得力、囲んだ小中学生から「速い」と思わずため息が漏れる。

「打ち込みはウォーミングアップではなく、技を作るための大事な練習だと意識してください」「1本1本、“技を作る”という意識でやってください」と、野村氏の背負投指導は打ち込み重視。そして常の通り「おんぶが背負投の理想」という重心コントロールの要諦を、今回は色々な角度からの語彙と様々なアクティビティで重ね塗り。ここが芯だと、丁寧に子供たちに伝えていた。

子どもたちの試技を見てアドバイス

「背負投を見せてくれる人!」の実技披露募集には、これまでの2技とは比べものにならないくらいの数の手が挙がる。髙藤選手も「背負投って皆やるんだな」と感嘆。

そして打ち込み重視の野村氏だけあり、レビューも濃やか。「凄くうまく入っていて上手だけど、一歩目が近いので窮屈。乱取りだと入れないかも」「近いと実は1人で回っているだけになる」「少しだけ遠くに入ると相手が崩れて来る」など、あくまで「投げる技を作る」視点からわかりやすく、丁寧にアドバイスを繰りだしていた。

乱取り稽古

続いては、2分4本の乱取りを2セット。講師の乱取り相手は抽選で選ばれ、金メダリストと組み合う機会に小中学生はモチベーションMAX。講師たちも息を弾ませて、良い技には飛び、今一歩の技は励ます優しい目線の引き立て稽古で交流。充実の表情だった。

トークセッション

恒例のトークセッション(質問コーナー)では、これまで以上に積極的な質問が続出した。「勝負飯は、『どん兵衛』。海外遠征のルーティンだった」(新井)、「緊張は受け入れる。緊張しても勝てるだけの練習をしてきているから」(髙藤)、「10年以内に結婚はしたい」(ドンマイ川端)と各講師それぞれの方向性で、1つ1つ真剣に応えていた。

「選ぶのは自分だよ」

興味深かったのは稽古に対する姿勢。「乱取りの時に何をやってもダメなときはどうするか」という中学生の質問に、髙藤選手は「あくまで試合で勝つためにやるのが練習だから、そもそも乱取りで勝とうとは思っていない。自分が出来ないことを試す場だから出来なくて当たり前。昨日負けた、今日勝ったと一喜一憂するのではなく、試合から逆算するのが大事」と回答。しかし続いての「日本代表になるにはどんな練習をすればいいですか」との質問には野村氏が、「私の練習は常に勝負。試合のつもりで、常にここで投げられたら終わりという緊張感を持ってやっていた」と回答。そして「やり方は人によって違うし、どれも正しい」と続けると「野村タイプ、髙藤タイプ、どちらがいいかを選ぶのは自分ですよ」と、一番大事なのは己の特徴を知ることだと語りかけていた。もちろん「俺を信じなさい!」と笑いを取るのも忘れなかった。

「じゃんけん対決プレゼントコーナー」

プレゼントコーナーでは、抽選で選ばれた小中学生に「今治タオルセット」(株式会社ミキハウス)、「AT-Mini Personal I」(伊藤超短波株式会社)、「アディダス バックパック」(アディダスジャパン株式会社)、「ドンマイ川端サイン入りミニタオル」、「髙藤直寿サイン入りTシャツ」「新井千鶴宛名入りサイン色紙」「講師4人のサイン色紙」、「野村忠宏サイン入り著書『戦う理由』」などが贈られた。コーナーの最後はお待ちかねのじゃんけん対決。勝者には「ダイワロイネットホテル宿泊券」(大和ハウス工業株式会社)がプレゼントされた。

野村氏の「一番大事なのは柔道を楽しむこと」「パリ五輪日本代表を応援しよう」「きょう、みんなを連れてきてくれた人たちにまず『ありがとう』を伝えよう」との3つの呼びかけで、約2時間半のイベントは幕。恒例の講師との「ハイタッチ」を経て帰路に着く小中学生たちの明るい表情が印象的だった。

修了後、報道陣の囲み取材に応じた各講師のコメントと、イベント写真は下記。

談話

野村忠宏氏
「子どもの頃にチャンピオンが柔道教室に来てくれて、メダルを掛けてくれたり技を教えてくれたことが、今でもいい思い出。私もこのイベントを通じて、子どもたちのエネルギーになるような出会い、いい思い出を作っていきたい。もちろんオリンピックに出るような強い選手になるのも素晴らしいことですし、強くなれるように頑張ってもらいたいと思いますけど、それ以上に、いつまで経っても柔道を愛して欲しい。そのためには『楽しかった』という思い出を持ってもらうことが一番大事です。たとえ競技をやめたとしても、いつまでもいい柔道ファンでいてもらいたい。『楽しむこと』が子どもたちや柔道の将来に繋がると思っています」

新井千鶴氏
「小中学生の一生懸命取り組もうとする姿を見て、昔の自分を思い出しました。もっともっと柔道を好きになってくれる子、柔道を始めてくれる子が増えて欲しい。こういうイベントに参加することが出来て、私自身もとてもいい経験が出来ました」

髙藤直寿選手
「子供たちのパワーを凄いなと思いましたし、憧れの野村忠宏さんと一緒に柔道教室が出来たということで、もう、感動しています。これからも呼んでもらえるように頑張りたいです」

ドンマイ川端氏
「楽しかったです!子どもも保護者も楽しそう。また呼んでもらいたいです」

写真レポート

野村道場、北陸では今回が初の開催。会場の新潟県上越市・謙信公武道館。
会場に設置された「夢ボード」に参加者がそれぞれの夢を書き込んだ。髙藤選手の夢は「もう1度オリンピックに出たい」
野村「みなさんこんにちは!1日柔道を楽しみましょう!」
新井「今日は一緒に楽しみましょう!」
髙藤「みなさん今日は1日よろしくお願いします、楽しんでいきましょう!」
川端「すみません、走るスピード間違えました!みなさん、ドンマイですよ!」
野村氏がこだわる礼儀・礼法の指導
髙藤選手が先頭を切ってランニング開始
髙藤選手の技披露は小内刈、肩車とこの体落の3種だった。
「『一本』を取る小内刈」指導に、会場が湧く。
「目線を高く」新井氏の内股は美しいフォームと技の威力がリンク。
野村氏の技披露。講道館公式動画でも紹介していた、軽量級型の内股も見せてくれた。
自ら受けて丁寧に背負投を指導
乱取りは8本、講師・生徒とも汗にまみれた。
新たな試み「観客席での交流」。人波が押し寄せた。
トークセッション。今回の質問者には「五輪の金メダルを掛けてもらえる」サプライズも!
「掛けてみた感想は?」「重いです!」
恒例のハイタッチで、「第九回 野村道場」は幕を下ろした。

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