文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
パリ五輪クオリファイングゲームの最終戦、アブダビ世界選手権が開幕。初日観戦直後のインプレッションをお届けする。すぐに2日目の競技が始まるので、例によってこの稿に費やせる時間は1時間半のみ。スピード重視。拙くても、粗くても、まずは「ある」ことを優先したいと思う。箇条書き・メモレベル。写真も入れること自体で細かく時間を奪われるので最小限としたい。
初日全体を通じて
まずは3階級を通じた大会自体について。
きちんと、世界選手権
まずは、きちんと「世界選手権」だった。2021年ハンガリー大会に続く2度目の五輪同年開催。本番まで2か月ということでレベルに危惧もあったのだが、常のワールドツアー大会とは一段も二段も違った。ここまでの9大会とはまったくの別物。決勝ラウンドの試合展開などは世界大会以外ではありえない巻き上がったものばかりだった。優勝者も大ベテランのオデット・ジュッフリダ(イタリア)に、若手のギオルギ・サルダラシヴィリ(ジョージア)、この1か月で突如頭角を現したバフードルジ・バーサンフー(モンゴル)とエントリー傾向を反映して属性が散った。いいバランス。豊かな大会になる予感がする。
イタリアの日だった
実は「イタリアの日」だった。52kg級では前述ジュッフリダが優勝。48kg級ではアッスンタ・スクットが過去イチの出来で(「過去イチ」のパフォーマンスを見せた選手がゴロゴロいる大会だったが)決勝に残った。
ハイパフォーマンス者続出
「過去イチ」、あるいは「実は物凄く強かった」選手が続出。優勝者以外で挙げていくと、60kg級のルカ・ムヘイゼ(フランス)、中村太樹、アユブ・ブリエフ(中立選手団)。イェルドス・スメトフ(カザフスタン)も良かった。48kg級は前述スクット、アビバ・アブジャキノワ(カザフスタン)、ツグジェ・ベデル(トルコ)、敗れてしまったが古賀若菜。52kg級はディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)に、少し範囲を広げるとマシャ・バルハウス(ドイツ)。
「技あり」の広さについて
1月のグランプリ・ポルトガルから萌芽が見え、2月の数大会で明らかになったところであるが、「技あり」の適用範囲が広がっている。90度接地という基準を超えて、肩が少しでも内側に入って接地すると「技あり」だ。ツアーをどっぷり見続けていると大量の蓄積ゆえに「これもあり」という感覚になってしまうのだが、世界選手権が久々の国際大会観戦の人たちにはかなり違和感があるはず。正当な感覚だ。基準を変えるならきちんとIJFはアナウンスすべき。ここまで明確に基準が変わると「非言語化された文脈の積み上げ」で処理すべき域を遥かに超える。60kg級中村太樹の失点はこの典型だった。納得感のない裁定は、競技自体への支持を損なう。もうすぐ改変期なので五輪までこのままいくのだろうが、日本から「決まったことは発表すべき」ときちんと意見を上げて欲しい。
48kg級
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