【eJudo’s EYE】栄冠は庶民の手に、「プロレタリアート」が決勝争ったパリ五輪/パリオリンピック2024柔道競技 男子73kg級 早出し評

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文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

栄冠は庶民の手に、「プロレタリアート」が決勝争ったパリ五輪

大激戦となった73kg級決勝

どういうタイトルだ、と思われるかもしれないが。これを説明するには筆者とeJudoチームの、73kg級ファイナリスト2人に対する勝手な思い入れをまず語らねばならない。

アブダビ世界選手権勝利時に書かせていただいたが、ヒダヤット・ヘイダロフは苦労人である。すでに世界選手権でメダルを得ながら、ルスタン・オルジョフというスターの存在に蓋をされてオリンピックには出場すらかなわず、どころか階級変更を余儀なくされて一時は81kg級で戦っていた選手である。風貌も、オルジョフの、母国の軍事紛争時にワールドツアーで「敬礼」をキメてみせるようなエリート軍人の風とは一線を画す。ツアー登場時は駅のロータリーで座り込む旅人のような長髪がトレードマーク、一時はなぜか坊主頭になってみたり、表情も常に柔和な「庶民派」である。柔道スタイルも、決して才能に恵まれたもののそれではない体力派。登場時、代名詞となるような技があるわけではなかった。尽きぬスタミナで前に出、間合いを詰め、かからなくても重たい勝負技を仕掛け続け、相手に根負けさせて勝利を得る。進化を止めず常にスタイルは変わり続け、5月に世界選手権を初めて取った際は、肩車系として尖りを見せていた。

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