【eJudo’s EYE】王者の物語完結、すべてを満たした千両役者リネール・「払腰は強者の証明」、決まり技も最高だった/パリオリンピック柔道競技2024 第7日(100kg超級、78kg超級)

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文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

テディ・リネール

王者の物語完結、すべてを満たした千両役者リネール

やはり優勝はこの人、テディ・リネール(フランス)。出だしは明らかに不調だった。マゴメドマル・マゴメドマロフ(アラブ首長国連邦)を畳に迎えた2回戦は、計6分30秒を費やしての「指導3」勝ち。動きは極めて鈍い。当初は組み手の優位を取り続けることでリスク負わぬまま安全に勝とうとしているだけの可能性があると見ていたのだが、GS延長戦を超えてからこの観察が曇った。明らかに投げに行っているのに、そして「投げられる作り」が出来ているにも関わらず、完遂出来ない。「投げることが出来ない」のではない。「投げをきちんと終わらせることが出来ない」のだ。フォームと力の伝達が噛み合わず自分の側だけが崩れ、返し技を食う前にと自ら前に伏せてお茶を濁してしまう。崩れ方も悪い。一歩遅れたら実際に返されてしまったはず。今大会、フランス勢は全体としてコンディションが良くない。前評判の高い選手ほどその傾向が強い。隣の畳で戦っている78kg超級のホマーヌ・ディッコも控えめに言って全然よくない。これは、ダメだ。地元開催のプレッシャーは巨人リネールですら狂わせるのだ、と嘆息せざるを得なかった。

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