強豪比較的バランスよく配される
エントリーは37名。「階級概況・勢力図」で示した予想からのシード選手配置の変更はなし。
最大の不確定要素と目されたイェルドス・スメトフ(カザフスタン)はプールC、エンフタイワン・アリウンボルド(モンゴル)の山に配された。また、シードから漏れていた強豪でこの選手に次ぐ力を持つと思われるルカ・ムヘイゼ(フランス)も同サイド、プールDのヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)直下に置かれた。強豪の配置に関しては、極端に偏らずにバランスよく散ったという印象だ。
髙藤はバイラモフ、ヤン、サルダラシヴィリ
優勝候補の髙藤直寿(パーク24)は、第8シードとしてプールA下側の山からのスタート。直下にツラン・バイラモフ(アゼルバイジャン)を引き、この選手との3回戦が最初の山場となる。詳しくはプールごとの展望で述べるが、予想される以降の組み合わせは、準々決勝でヤン・ユンウェイ(台湾)、準決勝でギオルギ・サルダラシヴィリ(ジョージア)、決勝でスメトフ。決勝のスメトフ以外は事前の予想どおり、かつスメトフの配置も逆サイドと理想的なものとなっている。ヤンの山に、髙藤が「やりにくそう」な選手として挙げたヌルカナト・セリクバエフ(カザフスタン)がいることがやや気掛かりだが、この選手がヤンに勝利して上がってくる可能性は低く、仮に対戦が組まれたとしても髙藤との間にはかなりの実力差がある。あくまでも「面倒」の域を出ることはなく、勝敗が揺れる可能性はほとんどないだろう。
なかなか世界大会で使うことの少ない表現だが、髙藤の優勝はほぼ既定路線。「階級概況」でも述べたとおり、どのような柔道を「表現」するのかに注目したい。また、決勝での対戦が濃厚なスメトフは、髙藤がジュニア時代から注目し、東京五輪でも死闘を繰り広げた相手。実力は髙藤が一段上だが、仮にスメトフがここまで勝ち上がれるコンディションならば、かなりの熱戦が期待できるはずだ。「階級概況」でも述べたとおり、スメトフは経験値や潜在的な能力で唯一髙藤に迫り得る存在。最近の髙藤は限りなくロジックに振った戦い方をしているが、東京五輪での戦いから補助線を引くならば、スメトフはこれと真逆の瞬間ごとの加速で勝負してくるはず。論理的な組み立てのみでこれを封じることは難しく、より直感的な反応が重要になるはずだ。
髙藤の対戦相手でもう1つトピックとして言及しておきたいのは、日本人コーチの影。
おそらく初戦で対戦するのはハクベルディ・ジュマエフ(トルクメニスタン)。トルクメニスタンには2月からもと60kg級世界選手権銀メダリスト徳野和彦氏が監督として赴任している。そして準々決勝で戦うヤン・ユンウェイ。こちらは、66kg級で世界選手権2大会の日本代表を務めた東海大の同級生・髙市賢悟氏が4月から台湾のコーチに就任し、直接指導に当たっている。
ジュマエフはそもそもの実力差から問題なし。ヤンに関しても、柔道が破れを作れるタイプではなく型が決まっていること、髙藤の柔道の完成度が高いことから有利不利の構図を簡単に崩せるとは思わないが、留意しておきたい。
有力選手の配置、各プールおよび決勝ラウンドのひとこと展望は下記。有力選手の特徴については「選手名鑑」を、組み合わせは公式サイトで山組を確認のこと。
プールA
第1シード:ヤン・ユンウェイ(台湾)
有力選手:ロドリゴ=コスタ・ロペス(ポルトガル)、ヌルカナト・セリクバエフ(カザフスタン)
ヤンの勝ち上がりが濃厚。前述のとおり3回戦で対戦する位置に注目選手のセリクバエフが配されており、この選手との試合が山場だ。両手で相手の腕深くを持つ「クワガタ組み手」が軸の変則派・セリクバエフに対して正統派のヤンがどのような試合を見せるのか。内容にも注目したい。
第8シード:髙藤直寿(パーク24)
有力選手:ハクベルディ・ジュマエフ(トルクメニスタン)、ツラン・バイラモフ(アゼルバイジャン)
髙藤の勝ち上がりが確定的。前述のとおり、3回戦のバイラモフ戦が山場だ。この選手は片手の左背負投などややトリッキーな担ぎ技を持っているため、組み際には要注意。ただし髙藤がそれを把握していないわけもなく、事故が起こる可能性はほとんどないだろう。
準々決勝の予想カードは、ヤンvs髙藤。
ヤンは階級トップクラスの実力者だが、正統派の担ぎ技系で飛び道具は持たない。髙藤にとっては戦いやすい相手と言ってよいだろう。伏せ際の「横三角」は警戒する必要があるが、髙藤の勝ち上がりと考えて間違いないはず。ただし、ヤンは組み手の防壁が堅いため、時間が掛かる可能性がある。以降の試合を考えた場合、髙藤としてはできるだけ消耗少く勝ち上がりたいところ。
プールB
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