文責;古田英毅
Text by Hideki Furuta
世界柔道選手権大会が、きょう19日から6日間にわたってアラブ首長国連邦・アブダビで開催される。オリンピックと同年開催は2021年ハンガリー大会に続く2度目。この時と同様、今大会がパリ五輪のクオリファイ(出場資格獲得)イベント最終戦と設定された。
五輪と同年開催ということで、ファンにとっては大会全体のレベルが気になるところ。今回の派遣選手には各国の事情が交差する。同じ国でも五輪2か月前に敢えて金メダル候補の超強豪を送り込む階級あれば、ロス五輪を見据えた若手を送り込む階級、あるいは極端に派遣自体を見送る階級などまちまち。傾向を国・階級でばっさり表現するのは難しい。全体的な傾向は「超一線級から期待の若手まで揃った多層構造」というしかないのだが、結果としてはどの階級もこれぞ世界選手権というだけのレベルはしっかり備えることとなった。常のワールドツアー大会と比べると、やはり一段も二段も格の違う大会だ。
敢えて「国」で言えば、テディ・リネールこそ下げたものの、アモンディーヌ・ブシャーやクラリス・アグベニューなど一線級を惜しみなく注ぎ込んだフランスのラインナップの良さが目立つ。階級の到達点でいえば、タト・グリガラシヴィリ(ジョージア)とマティアス・カッス(ベルギー)の2強が五輪おかまいなしにエントリーした81kg級。大会全体としては、出口クリスタ(カナダ)とジェシカ・クリムカイト(カナダ)など「この大会で五輪代表争いに決着」の選手たち、あるいはエドゥアルド・トリッペル(ドイツ)のように「ここで勝たないと五輪がなくなる崖っぷち」クラスタ、エルジャン・ハジエフ(アゼルバイジャン)ら「ここが五輪の最終試験」(推測だが)組が一段上の力を出すか、ここが大きなみどころだ。
日本はベテランも混ざるが、全体としてはロス五輪を見据えた若手の有力選手が軸。他国も「日本はかなり戦略的にやってきたな」と思っているはずだ。
【男子60kg級】
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