
※座談会は2025年5月6日(2回戦まで)・15日(3回戦以降)に開催されました。
(⑤三回戦からつづく)
準々決勝

中野寛太(推薦・旭化成) - 木元拓人(東京・日本製鉄)
香川大吾(東京・ALSOK) - 太田彪雅(東京・旭化成)
原沢久喜(推薦・長府工産) - 上林山裕馬(九州・福岡県警察)
佐藤和哉(東京・日本製鉄) - 増山香補(東京・パーク24)
古田 これでベスト8が出揃いました。毎年このあたりからステージごとに上水先生にその時の所見、予想を振り返って頂くんですけど、今回この時点ではどう思われましたか。
上水 この時、僕は原沢選手が最後まで行くのではないかなと思っていました。田嶋選手という山を越え、影浦選手という関門も乗り越えた。次は上林山選手、そして準決勝は日大の後輩である佐藤選手か増山選手。左側パートと比べると、もう、決勝進出というゴールが見えつつあるのではないかと。・・・先ほど、日大の金野先生が「原沢は練習を積めていなかった」というスタミナ上の危惧を抱いていたという話をしましたが、あれは試合が終わってからお聞きしたこと。このときこの時点では、私は「原沢選手の流れだな」と感じていました。

古田 なるほど。朝飛先生、西森さんのお二人はいかがでした?
朝飛 私は座談会の段階から香川選手を推しており、そして太田選手と香川選手の準々決勝で勝った方が最後まで「行く」と見立てていましたので、ここが大きな勝負だなと。そして3回戦までの太田選手が元気がなかったので「もしかしたらギアを上げてくるのかな」とか、そんなことを考えていました。あとは増山選手が非常に会場を沸かせていたので、これは面白いんじゃないか、流れを掴んでいるのではないか、まだ上に上がれるのではないか、とワクワクしていましたね。
古田 ありがとうございます。西森さんは戦前から香川選手を注目選手として挙げていましたね。いかがでした?
西森 左の山で言うと、太田選手はやはり調子がよくない、これは決勝までは難しそうだ。これは香川選手と中野選手のどちらが上がるかだろうなと、そこまでは考えていました。右側は原沢選手が上がるとは思いましたが、トータルで見ると『右の山』はどうしても最後スタミナ的に厳しくなるので、どこまで余力を残して勝ち上がれるかがポイントだな、という感じで見ていました。
古田 ありがとうございます。お三方の話を聞いて臨場感を体の中に再現させつつ、準々決勝に入ってまいりたいと思います。
中野寛太(推薦・旭化成)○優勢[僅差3-0]△木元拓人(東京・日本製鉄)

古田 準々決勝最初の試合。中野寛太選手と木元拓人選手の試合。判定3-0で勝負が決しました。朝飛先生の方からお願いいたします。
朝飛 木元選手が強かった。木元選手は組んで攻める正攻法タイプなので中野選手にとっては力を出しやすいのではないかと思っていたのですが、疲れもあったのか、なかなかいいところを出せなかったですね。左右の足払いや払釣込足などでいい場面も作りましたが、全体として木元選手の懐の深さに手こずっているという印象でした。木元選手は例えばあの「足取り」からの突進で引っ掛ければ面白くなるのではいかと思いましたが、中野選手が無理な動きをせず、流れを見ながらしっかり3-0でまとめた。そんな印象でした。
古田 ありがとうございます。上水先生いかがでしょう。
上水 私も、得意のケンカ四つでなおかつ的が大きいということで、中野選手にとって木元選手はやりやすいのではと見ていたのですが、すこし慎重になり過ぎた印象です。要所で技を出しながら、判定が拾える状況は作り続けていたとは思うのですが、もう少し思い切った試合が出来たのではないかとは思いました。もちろん、それだけ木元選手に地力があるということだとは思いますが、私としては、ここで、昨年度大会優勝、今回は連覇を狙うという「立場の重圧」が出て来ているのかなと感じましたね。それでも勝つのですから力自体は相当なものですが、単に「流れで勝った」と言えるのかなと。判定になったことはともかく、明らかにこの技で倒したとか、文句なしに3本来るはずとか、そういう何かはなかった。前の試合でウルフ選手に勝って「ホッとした」とまではいかないですが、ギアをうまく上げられなかったなと。切り替えが出来ていない。ウルフ戦の余波がすこしあった試合かなとも思いました。
![中野寛太○優勢[僅差3-0]△木元拓人](https://ejudo.info/wp-content/uploads/2026/04/20250429_REVIEW_GAME_QF_003_NAKANO_KIMOTO-960x720.jpg)
古田 安易にこういう言い方をすることは慎むべきですが、率直に「名前勝ち」というワードは思い浮かびました。昨年のチャンピオンを相手にしているというところでは、木元選手のほうはよほどハッキリしたアドバンテージを作れないと、どのみちこの試合は取れなかったよね、ということも思いました。西森さん、いかがでしょう。
西森 予想座談会で話していた「名前のある相手に判定で勝とうとするのであれば、明確な差をつけなければいかない」というトピックが当てはまる試合になったかなと思います。手元のメモを見返すと、「木元、もう1回勝負が必要」と書いているんですよね。チャレンジャーの木元選手が旗を持ってくるには、少し足りなかった。「前に出る気持ち」は旗判定があるルールでは非常に大事だなと、あらためて思いました。一方、中野選手の試合ぶりにもその後に不安を感じさせるものがありました。それこそさっき古田さんが仰った「名前で勝った」ように見えてしまう。こういう戦い方をしている選手が流れを逃してしまうというのは、もう、何年も全日本を見て来て本当に感じるところですから。そして最後まで勝つ選手というのは必ず準々決勝あたりからやっぱりギアが上がってきますから。結果云々ではなくここで消極的、慎重な試合を見せてしまった中野選手、勝つには勝ったけど「この後」が難しくなるのではと思いました。
古田 ありがとうございます。毎年会場に足を運ぶ全日本ウォッチャーたちはおそらく、3回戦あたりの山場を乗り越えたら次の準々決勝は吹っ切ってスコーンといい試合を見せる、それが既視感ある「優勝者の振る舞い」だと感じていると思うんですよね。上水先生もいつも「準々決勝が大事」と仰っていますが、そこでいうと中野選手、少し先に不安を残す試合でした。選抜で怪我をしたという情報を危惧していましたが、ウルフ選手に勝って「意外と影響ないのかな、行くのではないのかな?」と思い始めたたところで、ブレーキを掛けられた気がしました。歴代選手権者のシナリオに乗って来ていないな、と思わされ、少し違和感を感じた試合ではありました。
香川大吾(東京・ALSOK)○優勢[僅差3-0]△太田彪雅(東京・旭化成)
![香川大吾○優勢[僅差3-0]△太田彪雅](https://ejudo.info/wp-content/uploads/2025/05/20250429_AJJC_RV_041_KAGAWA-960x720.jpg)
古田 大一番です。両選手の師匠である上水先生からは最後にコメントいただくことにして、まず西森さんからお願いします。
西森 香川選手を相手にしたことで、ここまでの2試合で感じていた太田選手に対する違和感が、もう本当に、明確な差となって表れたと感じました。香川選手に対して掛ける技が、物凄く軽く感じたんですね。右の内股、途中からは左の背負投も見せたんですけど、いい時であれば相手が香川選手であってもきちんと崩せるはずの技を、まったく効かせられない。崩さないまま掛けるので体で弾かれる。そして散発。技が繋がらない。一方の香川選手は片手の内股であっても、効果的に崩している。香川選手がよく言われるところの、最後に1つ掛けてターンを終わるとか、縺れて必ず相手の上になるとか、そういう良さ、細かいうまさで差がついていた。一方3分台くらいの攻防で香川選手が立て続けに掛けていい場面を作ったのですが、もう太田選手の側は巻き返す力がない。バイタリティがない。そのまま失速して時間が終わってしまったというのが試合の印象です。予想座談会で言及があった、「ちょっとした局面の差が試合全体に拡大される」ということがよく表れた試合になったと思いました。
古田 ありがとうございます。朝飛先生、お願いします。
朝飛 香川選手が、自分有利で進め続けること、これを徹底した試合だったと思います。太田選手はまったく自分のペースを作れず、そして最後は作れないことに焦ってさらにペース狂わせてしまう、そういう感じに見えました。予想座談会、私は香川選手の名を挙げつつも「ほんの少しの差が大きく勝負を分ける」ということで太田選手の勝利を推しましたが、「ほんの少しの差が勝負を分ける」ところまでは当たり。ただ、勝敗は変わった。このことをきちんと理解している香川選手の側が実際の勝負を取ったという形になりましたね。どうやって自分のペースを作るのかをしっかり考えていました。太田選手の技も、最後の奇襲で何が来るかまでをしっかり読み切って試合を作っていましたね。格好良さを覚える試合でした。
![香川大吾○優勢[僅差3-0]△太田彪雅](https://ejudo.info/wp-content/uploads/2026/04/20250429_REVIEW_GAME_QF_004_KAGAWA-960x720.jpg)
古田 ありがとうございます。最後に上水先生からお願いいたします。
上水 この試合が始まるまで、私はどちらの選手とも話をしていないんですよね。どうなるのかなと思って見ていました。香川選手に後から話を聞いたら、「先生、組み合うときに太田の表情が死んでいたので、絶対勝てると思いました」と。まずはこの気迫の差があったなと思います。試合に関しては。いつもの香川選手は太田選手の釣り手に封じられて攻め手を欠くところがあったんですけど、今回はその釣り手を掻い潜って、多少自分の形を崩して攻めた。帯を持って接近戦を挑んだりして、先・先に行くことで太田選手を削っていった。よく研究していたなと思います。さきほど香川選手の3回戦までを「アイドリング」と表現しましたけど、この準々決勝でギアを上げる準備をしっかりしていましたね。一方の太田選手の方はこれまでの試合から、だんだん自信をなくして迎える準々決勝。この差がもろに出た一番だったと思います。太田選手が一番悪いときのパターンに嵌ってしまった。香川選手の気迫勝ちと言っていいかと思います。
古田 ありがとうございます。香川選手の試合後のコメントから。対太田選手戦に関してはメモをiPhoneに入れていたのですが、試合前に確認しようと見返したら、もう読み終わらないぐらいにメモが積み重なっていた、と。まずはこの真摯な研究ですね。そして研究を実行する気迫。試合中どの局面を切って「今の時点ではどちらが勝ちか」と測ったとしても、常に香川選手が太田選手を凌駕している。そういう試合だったと思います。
原沢久喜(推薦・長府工産)○腕挫十字固(0:56)△上林山裕馬(九州・福岡県警察)

古田 続きまして原沢久喜選手と上林山裕馬選手の試合。朝飛先生のほうからお願いします。
朝飛 上林山選手、ここまでは調子も良く、どんどん前に出る試合を見せてくれて非常に面白かった。ただ、この試合は原沢選手の懐の深さを前に手詰まり。釣り手を上から被せられて、潰されてしまった。ではどうするのかな、次は思い切ってまず大外刈や内股に入っていくのかなと思ったら、そこで勝負が決まってしまった。原沢選手が上手かったですね。相手が潰れた時に下までベタっとお腹がつかないように膝を入れて、 四つん這いになるかならないかのところで止めておいて、相手が何もしてこないだろうと思った一瞬にすっと跨いで腕を取った。本当に名人芸。あれだけ綺麗で大きい投技を持ちながら、こうした細かい技もしっかり、それもこの大舞台で決める。原沢選手の凄さを感じました。
古田 ありがとうございます。教え子さんの試合が続きます、上水先生からお願いいたします。
上水 この試合は裕馬、じゃない、上林山選手がまた何かやってくれるかなと楽しみにしていたんですが、やる前にやられてしまった。戻ってきたところに、お前何をしているんだ、(ベスト8)で満足していたんじゃないのか、と声を掛けました。最後、腕が伸び切る前に「参った」したように見えたんですよね。
古田 少し早いかな?とは思いました。
上水 そこまでの戦い方が良かっただけに、もう少し粘って戦って欲しかったですね。ただ、そこには原沢選手のオーラもあった気がします。・・・組みたいけど組めずに少し気持ちが引けた、そして潰れたところに腕を取られてしまったので割合早い判断でタップした、そういう試合だったのではと思います。ベスト8が出揃った時点で原沢選手が良いのではないか、と思ったのは先ほどお話しした通りですが、この試合を見てさらにその思いを強くしました。本来きついトーナメント右側ですが、かなり体力を残せましたし。
古田 全日本選手権・準々決勝の法則で言うと原沢選手が軌道に「乗った」という感じですよね。ありがとうございます。西森さんお願いいたします。

西森 この腕挫十字固は本当に上手かった。原沢選手はアメリカで柔道を指導するとともにブラジリアン柔術の練習をしているということでしたが、その上積み要素が出た試合だったのかなと思います。先ほど上林山選手の「参った」が少し早いように見えたという話がありましたが、原沢選手の膝の挟み込みがかなり良かったんですね。もう、倒れ込んだときにはかなり極まっていたと思うので、あれは色々な意味でやむを得ない「参った」だったかなと思います。そのくらい、原沢選手、もはや本格派寝技選手の動きが出来ていた。もちろんもともと寝技もやらないわけではなかったですが、基本的には「投げて抑える」選手。ああいう際(きわ)で、厳しく寝技で取り切るというのはこれまでなかった姿だなと。1年試合に出ずに上積みしてきたものが見えた試合だったなと思います。上林山選手は残念でしたけどここまでの奮闘ぶりは見事。年齢は上がっていますが、全日本の「門番候補」としてもう少し頑張ってほしいなと思いました。
古田 「門番」の資格ありとは思いましたよね。
西森 特に3回戦、若手の鈴木選手に勝った試合などは非常にそれを感じさせました。また来年見たい選手ですね。
古田 私たちは全日本選手権を見るにあたり、どこかいつも「門番候補が現れないかな」と思って観察しているところがあるんですけど、結構、それにかなう試合ぶりだったと思います。・・・腕挫十字固には思うところがいくつかあって。柏崎先生が仲良しのニール・アダムス氏の講習会にお付き合いして、彼の受けをしてあげたことがあるそうなんです。軽く乱取りみたいなものだったのですが、何合かやりとりしたあとで、得意技を引き出してあげようと自ら伏せて、アダムス式の腕挫十字固を掛けさせたら、これがもう凄まじかったと。腕を取られた瞬間、まだ回転もしていないし、見た目極めてはいないはずに見えるだろう段階なのに、それだけでもう「参った」するくらいに極まる。それまで繰り出した技術とはまったくレベルが違った。なるほど上手いと感心したと。さきほどの西森さんの「膝の挟み込み」ではないですが、関節技には私程度が遠目で見ているくらいだとわからない、芯の極めどころがあるんだなと。もう1つは上水先生の、すこしオーラに当てられて「参った」が早まったところがあるのではないかという観察。そういえば試合後の上林山選手のコメントで「原沢さんと試合をするのは初めてですけど、学生の頃はよく稽古をつけて頂いた」というくだりがありました。
上水 横綱にぶつかり稽古してたようなものですよ。
古田 という関係が少し出てしまったのかもしれないな、と上水先生のお話を聞いて思いました。「緊張はなく、やってやるぞという気持ちだった」とも話していましたが、先ほどの話とリンクするところがあるなと思ったので、紹介させて頂きました。
増山香補(東京・パーク24)○優勢[僅差3-0]△佐藤和哉(東京・日本製鉄)

佐藤が右、増山が左組みのケンカ四つ。のっけから増山が奇襲を連発。まず片手の左背負投から空転して足を取る右の「回転朽木倒」、さらに片手の肘抜き袖釣込腰から両手で肩腕を取っての変則左背負投、続いて片手の左背負投からまたも空転、脚を掴んでの左「足取り小外刈」。これを受けた1分6秒には佐藤に「指導」ひとつが与えられるに至る。毒気を抜かれたか佐藤は攻め遅れ、増山の激しい肘振りの前に釣り手も手につかない。2分過ぎに初めて両襟を持って形上優位を作るが、増山は頭を下げて我慢したまま手で下履きを抑えて図太く進退。このターンは流れる。2分43秒には引き手争いに嵌った佐藤に片手のゼスチャーとともに「指導2」。以降も佐藤は詰め切れず。増山の側もやや動き止まるが、残り30秒から持ち直してまたもや「回転朽木倒」。そして試合終了。ファーストターンのインパクトは動かしがたく、判定は三審がともに増山を支持した。(当日戦評・eJudo)
古田 そして増山香補選手と佐藤和哉選手の一番。判定3-0、そして意外にもというか、このスタッツが納得出来る、少々一方的な内容でした。上水先生、お願いします。
上水 試合前は、佐藤選手の側にすこし分がある試合という気がしていました。増山選手の担ぎ技を受けた後に、小外刈など後技を嵌めるのではないかと。増山選手は背負投に自信を持っている反面、過去そういう形で負けてしまった試合も散見されたので、そのケースと佐藤選手が得意とする足技が噛み合ってしまうのではないかと。ただ、まったく違いましたね。担ぎ技の威力が予想以上であったことはもちろん、あの、敢えて空回りといいますか、背負投で一回転した後に足を取って肩車や朽木倒に繋ぐ連続技。あれで佐藤選手に的を絞らせなかった。内容的には増山選手のほぼ完勝でしたね。彼の力を改めて思い知らされた試合でした。一方の佐藤選手の側はなかなか見せ場が作れず、本来はその分最後に思い切って勝負に行くのではないかとも思ったんですが、やりきれなかった。
![増山香補○優勢[僅差3-0]△佐藤和哉](https://ejudo.info/wp-content/uploads/2026/04/20250429_REVIEW_GAME_QF_007_MASHIYAMA-1080x720.jpg)
古田 ありがとうございます。西森さんいかがでしょうか。
西森 体重が軽い選手が重量級の選手を狩るときの、お手本のような試合だったなと思います。「回転朽木倒」ですよね。片襟背負投から一回転して脚を持つ。
古田 懐かしい技でしたね。私たちの世代あたりは皮膚感覚がある。
西森 この試合の増山選手はあの「回転朽木倒」を凄く効果的に使っていて、佐藤選手は後手を踏んでしまった。佐藤選手は両襟でいいからまず掴んで小外刈という、中盤に見せたあの攻めをもっと早く持ち込んでいればまた展開も違ったかもしれませんが、すこし繰り出すまでに時間がかかってしまったなという気がしました。増山選手が持ち味を存分に出して、佐藤選手を塗りこめていったという試合だったと思います。
古田 ありがとうございます。朝飛先生、いかがでしょう。
![増山香補○優勢[僅差3-0]△佐藤和哉](https://ejudo.info/wp-content/uploads/2026/04/20250429_REVIEW_GAME_QF_006_MASHIYAMA-960x720.jpg)
朝飛 お二方が言った通りの試合だと思います。・・・肩と耳をくっつけて顔を回転させると、佐藤選手の釣り手の重みがなくなる。相手が脇を締めてくるとまた手を上げて肩と耳をくっつける。増山選手がこれを繰り返すことで、佐藤選手は全く的を絞れませんでしたね。いいところを全く出せないまま終わってしまった。あと、印象的なのが、佐藤選手が両襟を持って大外刈を掛けてきた、それを受けるときに増山選手が右手をブラブラさせて、掛けてくる脚を手でポンポン叩いているんですね。「来たら脚取るぞ」とばかりに。あれは心理的にもかなりイヤなはず。ルールを上手く使った攻め方というか、受け方というか。
古田 これも懐かしい感じですね。そういえば自分も昔、似たことをやっていました。ケンカ四つの内股で相手が作用足振り上げると、わざと先に膝にポンと触って送ってやったり。しかし、「足取り」を経験してない世代がこんないい意味で手慣れたというか、練れた攻防をするものなんですね。実に面白かった。・・・増山選手はこれが3試合目、最重量級の選手と戦うのはこの佐藤選手戦が初めてですが、いきなりリミッターを外したなと思いました。「回転朽木倒」とか、「足取り小外」とかを、それも順番にではなく、最初のターンで全部一気に当てて、毒気を抜いてしまった。小出しではなく出すもの全部出して展開を取って、相手が焦って出てくるとまたそこを取って、と、私たちの世代にとってはすごく既視感のある試合でした。
西森 実に面白かったですね。
古田 さあ、ベスト4が出揃いました。準決勝に先立ち、準々決勝を見て頂いた上、ベスト8開始時点と終了後で何か見立てに変わりはありましたか?と、あの日を思い出してまず一言頂きたいと思います。
(⑦準決勝―決勝につづく)
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