文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
10月のタシケント世界選手権、9月の杭州アジア大会の日本代表選考会を兼ねる2022年全日本選抜柔道体重別選手権大会の開幕が、いよいよあす2日に迫った。
話題はなんといっても、史上空前の戦果を残した東京オリンピック代表組の復帰。男子は3月9日の組み合わせ発表の段階で金メダリスト5名を含む7名全員がエントリーを表明。ここから23日に73kg級の大野将平(旭化成)が、きのう31日には100kg級のウルフアロン(了徳寺大職)が欠けたが、稀に見る豪華メンバーであることには変わりない。久々「選抜らしい選抜」と言える大会だ。
というわけで、五輪を戦ったスターたちに、彼らを越えんと腕を撫す国内の超一流選手と素晴らしい面子が揃ったわけだが、五輪代表選手たちがどこまでのパフォーマンスを発揮出来るかは未知数。たとえばリオ明けの2017年春の時点の五輪選手たちの状態を想起するに、昨夏あれだけの激戦を戦い抜き、擦り減り切った選手たちがハイコンディションでやって来るとはなかなか考え難い。多少の個人差はあろうが、それなりに割り引いて考えておく必要があるだろう。五輪選手に限らず、試合自体が少なかったゆえどこまでやれるかの補助線が引きづらく、事前に出来を想像することが難しい。例年以上に、現場での「目」が大事になる大会だ。展望は彼らが概ね平均値の出来で来ることを想定して行うが、特に五輪代表選手が果たしてどこまで作れてきているのか1回戦からしっかり観察して、シナリオを修正しつつ楽しみたい大会だ。
60kg級 髙藤直寿と永山竜樹の戦い再び
東京五輪金メダリストの髙藤直寿(パーク24)が第1シード。第2シードには4大会連続で世界選手権の代表を務めている永山竜樹(了徳寺大職)が置かれた。五輪代表を激しく争ったこの2人の戦いが、そのまま今回のトーナメントを貫く軸だ。
対戦成績は3勝3敗。最後の対戦となった2019年グランドスラム大阪では髙藤が小内刈「技有」を得て勝利している。髙藤は以後も地力を上げ、進退の解像度を上げ、あの試合展開自体に内在するような融通無碍の柔道を獲得してさらに強さを増している。一方の永山は昨年のブダペスト世界選手権ではまさかのメダル逸。今年2月のグランドスラム・パリでは優勝も脚の肉離れを負って内容は決して良からず、かつてに比べるとやや停滞の感が否めない。ブダペスト後に発した「パリまで圧倒的に勝ち続ける」との言葉通りに永山が勝利して浮上のきっかけを掴むのか、それともまたもや髙藤が蓋をして「世界大会4度優勝」の圧倒的アドバンテージを加速させるのか。決勝の激突に注目したい。
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