参考:【評】さらに強くなった渡名喜、「近い間合い」の課題設定が柔道の解像度上げた
取材・評:古田英毅
Text by Hideki Furuta
準決勝まで
決勝に進んだのは角田夏実(了德寺大職員)と渡名喜風南(パーク24)。ブダペスト世界選手権金メダリストと東京五輪銀メダリスト、期待通りの頂点対決が実現した。
角田、徹底警戒跳ね除けて決勝へ
第1シードの角田は1回戦でまず2019年の全日本ジュニア王者で、同年の講道館杯でも2位入賞を果たした渡邉愛子(東海大4年)を畳に迎える。
長身対決となったこの試合はともに左組みの相四つ。渡邉激しく奥襟を叩くが角田は絞り落として巴投。渡邊は右構えを交えながらアプローチ、スタンスを左に戻すと近い袖を引き手で抱える「ケンカ四つクロス」で接近する、しかし出口を見つけられぬまま待ちに出てしまい、1分20秒変則組み手を続けたことによる「指導」。続いての攻防は互いが奥襟を叩いて相手を引き寄せあう形。ともに力が強くバランスの拮抗が起こるが、間合いが欲しい角田は左の所謂「小内払い」で蹴り上げてスペースを確保、流れるように巴投に打って出る。崩しきれなかったが腕挫十字固に繋いで「待て」。
ここから双方奥襟を叩き、そして落とし合うがこの動的膠着は角田が望んだ展開の感あり。2分22秒双方に「取り組まない」咎による「指導」が与えられて、これで「指導2」となった渡邉は後がなくなる。攻めるしかない渡邉奥襟を掴んでの攻撃を期すが、角田は叩き返しながらの払腰に、組み手で残った釣り手の手首を押す左背負落と継ぎ目なく技を積む。終盤渡邉が横変形ながら引き手で袖、釣り手で奥を掴む場面が訪れるが、角田は軽くステップを踏むと先んじて巴投。浮いた渡邉が手を着いて回避、正対した角田が下から引き込んで胴を挟み「待て」。ここで主審が渡邉に消極的試合姿勢の「指導3」を宣告。3分47秒、角田の勝利が決まった。
渡邉は奥を叩いて間合いを寄せるという入口の方針は明確だったが、角田の組み手の強さ自体に硬直。出口に繋ぐ戦術が見出せず、最後まで試合を動かせなかった。一方の角田は順当勝ちも、あの、相手の防壁がないがごとく「入れ食い」状態で投げまくった国際大会の印象からすれば苦戦の感は否めず。組み手の上手い選手の多い日本国内で、それも「ターゲット」認定されながらこの選抜体重別を勝ち上がることの難しさが早くもうかがわれた、立ち上がりの一番だった。
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