文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
タシケント世界選手権は本日が第2日、まもなく男子66kg級の競技が始まる。最大の焦点は東京五輪金メダリスト・阿部一二三(パーク24)と、世界選手権2連覇中の丸山城志郎(ミキハウス)の直接対決。あの伝説の「12・13」、史上稀なるビッグマッチで、ジャンルを超えてスポーツファンを魅了した両者の再戦に、誰もが期待しているはずだ。
ただ、「あの激闘の興奮を再び」と単純に勝った負けたの力比べを見るだけでは勿体ない。勝負を見るには軸が要る。スポーツを楽しむには争点が要る。両者の直近の対決である、4月の全日本選抜体重別選手権の決勝様相を整理することで、簡単にこれを抑えておきたい。
阿部の自信は「五輪に勝ったから」だけではない
この時の阿部の進退は全く違った。これまでの「捕まれば投げられる」ことを恐れることでジリ貧に陥ってしまった2018年グランドスラム大阪から2019年東京世界選手権までの3連覇時はもちろん、24分の長時間試合を戦い抜いて大内刈「技有」で勝利した代表決定戦時とも違う。間違いなく、自信に溢れていた。この力強い進退をメディアは「五輪で金メダルを取った自信」と咀嚼。そう聞かれれば阿部もこれを否定するはずはなく前向きに答え、そのままこれがこの試合の大見出しとなった。もちろんこれは間違いではない。それは五輪以後の阿部の対丸山戦以外の進退の良さからも、金メダリスト阿部がこれまでとは一段違う「自信」を得たことは明らかである。ただ、主筋は他にある。極めて乾いた、勝負ごとの事情がある。
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