【eJudo’s EYE】「コンディション」、「慣れ」、「戦略性」、「”雑力”」、弱い部分がすべて出てしまった斉藤の決勝/タシケント世界柔道選手権2022・早出し評

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アンディー・グランダとの決勝を戦う斉藤立

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

アンディー・グランダ(キューバ)が決勝の相手と聞いて、「貰った」と思った人が大半だったのではないか。今日の出来は素晴らしかったが、斉藤とは格が違いすぎる。

確かにこの日のグランダは良かった。「選手名鑑」を見てもらえればわかる通りもともと手札は多彩な人なのだが、これを有機的に繋げて、状況に応じて繰り出せるレベルの選手ではなかった。それがきょうは、まったく別人といっていい仕上がりだった。あくまで「出来る」レベルに過ぎなかった袖釣込腰を主軸に据えて、左右を使い、組み手の状況に応じて担ぎの形を変え、この技で試合を動かせるようになったことで得意の引き出し大内刈も嵌まった。狩った相手の格も初戦から順にシプーツ・リハールト(ハンガリー)、ダニエル・アレルストルフェル(オーストリア)、そしてグラム・ツシシヴィリ(ジョージア)にロイ・メイヤー(オランダ)、さらに斉藤と申し分なし。この日は「確変」が来ていたし、戴冠はそのパフォーマンスに比して妥当なものと言える。

それでもやはり斉藤が負けてしまうとは思わなかった。まずはグランダの健闘を評価すべきだろう。そこに異論はない。グランダは、強かった。

ただ、それにしても決勝は斉藤の側の内容が悪すぎた。既に「リアルタイム戦評」でも書かせて頂いたが、負け方が悪い。ロジカルではない。先に掛けたい相手に対して丁寧過ぎる組み手でマトを与え続けて嵌まり、大枠この構図1つだけで終わった試合だ。適切な手札を出し合った末にそのカードの内容で上を行かれた戦略負けではなく、相手の作戦に対して手がないまま、単に手持ちの「いま出せる武器」をバラバラに出して負けた。これが斉藤の試合とは信じがたい散文的な内容だった。

まだ試合を見返す前なのだが、いま考えている敗因について取り急ぎ記しておきたい。それぞれ絡み合うので整理出来るかどうか自信がないのだが、キーワードは「コンディション」、「コーチング」、「慣れ」、「戦略性」、「”雑力”の欠如」「技の幅の狭さ」といったところ。

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