写真:乾晋也・辺見真也/IJF
文:古田英毅・eJudo編集部
【準決勝まで】
もともと決して強豪の層が厚いわけではないワールドツアーの63kg級。加えて今回の来日メンバーに世界大会メダリストクラスはキャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)のみで、続く勢力もアンリケリス・バリオス(ベネズエラ)にアンジェリカ・シマンスカ(ポーランド)、カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)まででメジャー選手はほぼ打ち止め。若年カテゴリも加えれば世界ジュニア王者のヨアンネ・ファンリシャウト(オランダ)の名も挙げられるが、率直に言って海外勢のレベルは高くない。比するに、ドーハ世界選手権代表争いの渦中にある日本勢はレベル・モチベーションともに極めて高し。必然的に、ベスト4は日本勢が占めることとなった。
圧勝続きの日本勢がベスト4を独占
プールAからは復帰戦の講道館杯で優勝を飾ったばかり、結婚して今大会から姓を変えた東京五輪日本代表・髙市未来(旧姓田代・コマツ)が勝ち上がり。1回戦でシン・チェウォン(韓国)を開始47秒の袈裟固「一本」で下すと、2回戦ではタシケント世界選手権で銀メダルを獲得したキャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)を畳に迎えることとなる。早くも訪れた大一番は髙市が左、ブーシェミン=ピナードが右組みのケンカ四つ。髙市は引き手で時に襟を持つ強気、機を見て一方的に袖を掴んで力強く前へ。地力・技術ともに明らかに髙市が上、前に出ているがゆえにすべてが上手く回るという印象。圧を受け、小外刈で下げられ、もはや組み手を切ることでしか戦線を維持できないブーシェミン=ピナードは、当然ながら掛け潰れることが増える。髙市はこれを待ち構えて寝技を展開。初弾の肩車は取り切れず逃がしてしまったが、続いての隅返は手を着いて綺麗にかわし、すぐさま上体にアプローチ。左側から左手で右脚を抱え、横四方固を試みる。残る左脚の動きがうるさいとみるや敢えて1回立ち上がって一瞬体勢をリセット、引き手で左袖を抑えて仰向けに制し、崩袈裟固で抑え直す。こうなるとブーシェミン=ピナードまったく抗えず、あっさり「一本」。試合時間は僅か1分36秒、髙市は注目対決を圧勝で乗り越えた。
スポンサーリンク