【eJudo’s EYE】「髙藤はなぜそうしたのか」が唯一最大の焦点/ドーハ世界柔道選手権2023・男子60kg級「評」

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文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

髙藤は5位、メダルなしに終わった

男子60kg級の評をお届けする。世界選手権の進行は極めて厳しく、筆者にこの稿を書くため許される時間は約45分。なるべく脇道に逸れず、簡単に書きたい。おそらく話題になっているだろうガリーゴスの変則釣込腰についても、これはそれほど重要ではないので、2つ目のトピックとして記す。先に少し言っておくと、あの技(近い上腕を抱える腰技)は相応にメジャーな技法で2017年くらいから広く流行りだした技術。術者としてはファビオ・バジーレ、マリア・ペレス、ダニエル・カルグニンなどが挙げられる。ガリーゴスは改良を加えて「丸山スペシャル」と組み合わせて反対の手で帯を掴んで仕掛けているが、ツアーにおいては技術的な文脈がある技術で、突発的なものではない。安全性については肘より先が自由に動くというエクスキューズ(「橋本スペシャル」がセーフ判定になる理屈と一緒)が、一応ある。レポート記事にも書いた通り、メカニズム上、肘は極まらない。ただし、失敗すると極まるのであまり褒められた技ではないし、まさに丸山スペシャル属性を加えていることで危険度も増している(自身のヘッドダイブと相手が頭から落ちる可能性)。ただ今回は、技術云々、極まっていない云々よりも「グレーゾーンに近づいてくれるな」というこれまでのIJFの審判姿勢と方向性が違う裁定が下されたことを考えるべき。この「スルー」のジャッジをどう捉えるべきなのか。焦点はこのあたりにあると思う。

髙藤の負けは必然、いったいなぜ「そうした」のか?

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