【eJudos EYE】「引き手襟」に見出す日本女子柔道の希望/ドーハ世界柔道選手権2023・女子52kg級「評」②

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文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

(52kg級評①からつづく)

阿部詩の柔道に感じたこと、というお題での52kg級寸評2題目。その戦型から、少し話を広げて書いてみたい。

「引き手襟」に見出す日本女子柔道の希望

阿部とディストリア・クラスニキによる準決勝

阿部詩が今回新たに持ち込んだ上積みは「一手目の引き手襟」である。体幹を掴んでまず繋がり、己の力を伝えんとする戦型。もちろん「相手に間合いを詰めさせない」というディフェンス因子もあるのだが、基本的には組み合うための組み手、攻撃のための一手目だ。

「持ちどころ」は用途によっても、繰り出したい技によっても変わる。都度、やりたいことに沿ってフラットに決めればいい。これは当たり前のことで、ツアーの海外選手は普通にこれをこなす。日本人では男子は当然として、「メソッド柔道」で育てられて来て手順が硬直化しがちな女子にも、当たり前にこれが出来るものが増えた。そして己の力を伝えること、繋がることを最優先に置く選手が増えて来た。例えば最近「固定と足技」に振っている舟久保遥香などは引き手襟、釣り手奥襟の「両襟奥」、かつての軽量級女子であればなかなか見られなかった戦型を好む。

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