「自分の利益のみを図り、他人のことを考慮に加えずに行動するものがあるとすれば、その結果は、他日大なる利益の妨げになる 」
出典:「本会の主義より見たる人間の向上発展」
作興6巻8号 昭和2年8月 (『嘉納治五郎大系』1巻364頁)
今回の「ひとこと」、よく見ていただきたいのですが、文末に「。」がついていません。実は続きがあります。
・・・妨げになるから、やはり他人のためを図り、他人の妨害をなさずして、自分の利益を図るようにしなければならぬ
文章は、この「ならぬ」の後も続くのですが、今回は割愛します。気になる方は、是非、資料に当たって読んでいただければと思います。
さて、<自分のことだけを考えて行動すれば、逆に自分のためにならないことになる、だからこそ、自分のための行動でも、他人のことも考えなければならない>意訳すれば、こんなところでしょうか。
本連載の読者はすぐにお気づきになると思いますが、一連の流れはまさに「自他共栄」です。師範が利己主義を否定していないことは、第33回でも紹介しました。詳細はリンク先を見ていただきたいのです、おおむね、今回の「ひとこと」と同様の流れです。
師範が「精力善用」「自他共栄」の原型を発表したのは、大正11年(1922)頃とされています。当時、明治維新を経て、世界の舞台に立った日本は、日清・日露戦争、さらに第一次世界大戦を経験し、帝国主義の渦中にいました。
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