階級概況
この階級も混戦。メダル候補からイナル・タソエフ(中立選手団)がロシアの欠場により抜けたが、トーナメントのレベルの高さは変わらない。優勝争いに関しても、テディ・リネール(フランス)という軸はあるものの、かつてほどの絶対性はなく、あくまでもやや抜けた優勝候補という立ち位置。第1グループまでは全員に金メダルの可能性があると考えてよいだろう。
リネールは東京五輪後、形上は全勝も、体の力は減じている様子で失点も多い。昨年のドーハ世界選手権の決勝では、試合後にタソエフの得点が認められる形で両者優勝となっている。一方で投げるための組み手の方法論と技の精度は大きく上がっており、現在の評価は「過去最も投げる力はあるが、同時に失点のリスクもある状態」。リネールが投げを強く志向し始めたのは2016年のリオデジャネイロ五輪後であり、そしてシフトチェンジして以降まだ五輪のタイトルは獲得していない。本人は2028年ロサンゼルス五輪までの現役続行を公言しているが、現時点で35歳という年齢も考えれば、地元開催となるこのパリ五輪が実質的な集大成の場となるはず。かつて「指導」奪取が主体の「つまらない」柔道の代名詞であったリネールが、世界中の注目が集まる五輪の場で現在の「投げる」柔道でどこまで勝ち上がるのか、勝敗を超えた一つの時代の区切りとして、その戦いぶりに注目したい。
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