(2020年12月13日)

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
世紀の大一番、東京五輪66kg級代表を掛けた異例の「ワンマッチ」はご存じの通り総試合時間24分という大熱戦の末、阿部一二三が大内刈「技有」で丸山城志郎を下して初の五輪日本代表の座を射止めた。まだ映像で試合を見返していない段階なのだが、プレビューコラムの好評に応えて、取り急ぎ大急ぎで、メモを見ながら簡単にインプレッションを語りたい。
まずは凄い試合であった。2人の身体の仕上りは超人級。なぜこの技が決まらないの?しかも立って受け切るの?という場面が頻発。特にGS延長戦6分36秒に丸山が放った巴投(これまでの動きとは速さのレベルがまったく違った。本命技だったと思う)は、その後「一本」のコールがないのが不思議なほど、どんな受け方をしても勢いだけで吹っ飛ぶまさに投げ込み級の残像が見えたのだが、阿部はほぼまったく崩れず両足で降りている。阿部が背中を抱いて場外まで異様な距離を近い間合いのまま追った右大内刈、GS17分46秒に丸山が近接戦闘から身体を折って放った左小外掛などいずれも、世界のどんな相手でも畳に埋まるであろう残像見えた強烈な技を、それも双方全て立って受け切っていた。いったいどうやったらこの試合は終わるのか。世界チャンピオンがたった1試合だけのために全てを掛けて調整するというのはこういうことなのかと、背筋の寒くなる思いだった。
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