文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

16日に東京都柔道選手権が終了。これですべての地区の全日本選手権予選が終わった。あとは、予選免除で出場権があるメダリストたちの動向を見守るばかりである。
さて、その東京選手権。他地区の予選とは様相がかなり違った。筆者が目視したのは関東選手権だけで他は現時点で写真、あるいは動画ということになるわけだが、世界がまったく違う印象。ご賢察の通り、理由は「足取り」だ。
さすがはトップアスリート揃いの東京地区というべきか。上から下まで、当たり前に「足取り」を使いこなしていた。自分の柔道にどう積み増すか、どう整理して対処するのか。攻めるも守るも、背伸びなく「足取り」を己の技術体系に組み入れているのが印象的だった。いずれも超級の佐藤和哉と木元拓人が決勝に進み、かつその決勝でも「足取り」を使いこなしていたことに今大会の様相端的。大技への切り返しと牽制、小技(小内刈など)起点で「傷口を広げていく」(掬投や朽木倒に繋ぐ)と、IJFルールとはまったく違う面白い攻防が見られた。
全体を通じてみると、「入り」はみなそつなくこなすが、決めが粗い傾向を感じた。持ち上げても、崩しても落とし際、着き際の体の使い方が研がれていない印象。大きく放ったのに、軌道が大きいがゆえに回り過ぎてノーポイントという場面が多かった。もちろん、掬投のハイテクニックである「相手が脚を股中に入れて耐えた際に、上体を固定しておいて跨いで抜き、そのまま縦に放る」(遠藤純男式)などはさすがにロストテクノロジーの域、現段階で使いこなすものはいなかった。「やる」と「観る」は大違い。掬投という超兵器(いまにして思えば)の技術が爛熟の極みにあった00年代、あの世代を経験したファンなら「これを知っていれば決まるのに」と思ったはずの場面はかなり多かったと思う。長い目で見て、この先年1回の全日本選手権限定というフィールドで、「足取り」のテクニックの精度がどこまで上がっていくのか。非常に興味深い。
「やぐら」はやはり掬投の系譜にあたる技なのだな、とか、「サリハニ」はもう使えない、とか、改めて感じたこと、発見も多し。非常に面白かったので、レポート記事では紹介し切れなかった「足取り技」の写真をシェアすることで、雰囲気を伝えてみたい。メインディッシュである全日本本戦の方向性を決める「前菜」ということで、おいしく味わっていただければ幸いである。
写真:知念駿太・古田英毅
【2回戦】佐々木健志(ALSOK)〇掬投(1:56)△小竹守(東洋水産)

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