令和4年全日本柔道選手権大会・全試合戦評①一回戦

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大会日時:2022(R4)年4月29日 会場:日本武道館

文責:古田英毅

千野根有我(関東・筑波大4年)○内股(1:56)△福本翼(中国・広島県警察)

千野根有我が内股「一本」。オープニングゲームを素晴らしい技で飾った。

千野根が右、福本が左組みのケンカ四つ。千野根はやる気十分。釣り手を上から持って引き手を求め、得意の前技フェイントの右小外刈を敢えて晒し、膝を挙げて牽制を呉れる。福本は得意の両襟でスタート、しかし千野根に引き手で袖の外側を持たれると嫌って切り離し、再び引き手争いに戻る。双方重量級とは思えぬスピードで袖を求め合うが、ここで主審が試合を止め、45秒福本のみに「取り組まない」咎による「指導」。以降も引き手争いが続き、そして一貫して試合を引っ張るのは千野根。1分12秒にはフェイントの右小外刈。膝から先をカクリと曲げる得意の形で刈り込むが予期した福本動ぜず受け止め、双方淡々と攻防を継続。ここで千野根が釣り手の肘を上から載せ、引き手で袖の外側を掴むほぼ完璧な組み手を作り出すが、約20秒にわたるこの優位の間に決定打は出せず。小外刈と内股で牽制したのみで引き手を切られ、いったん優位は潰えてしまう。しかし直後、再びほぼ完璧な組み手を作ると今度は素早い仕掛け。組み手の悪さに危機を感じた福本が腰を差そうとしたその出端を捉え、先んじてスパンと鋭い右内股一撃。あまりのタイミングの良さに体重130キロの福本の体がほとんど重さを感じさせぬまま右前隅に一回転、乾いた音を立てて畳に落ちて「一本」。試合時間1分56秒、令和屈指の好大会は鮮やかな投技「一本」で幕を開けることとなった。

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