【eJudo’s EYE】「森の迷い道」は健在、7位で終戦も“面白くて怖い”イダリス・オルティスの柔道/タシケント世界柔道選手権2022・早出し評

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78kg超級はホマーヌ・ディッコの優勝で幕となった。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

78kg超級についても、簡単に「早出し」を。世界王者不在の中、己こそV候補の筆頭との自覚ゆえか一段強さの位相を上げたホマーヌ・ディッコ(フランス)の逞しい戦いぶりに、長年国内2番手の座から抜け切れなかったベアトリス・ソウザ(ブラジル)の大健闘2位と、今回も見どころ非常に多かった。

躍進ソウザ2位入賞

これまで投げの強さに頼ってどちらかというと柔道が大味だったソウザが、「組み手と駆け引き」のハシゴを掛けて、ついに壁を破って決勝まで進んで見せたことなどは、年々知恵比べの様相強まる女子最重量級の傾向を端的に示しているかのようで、なかなか味わい深かった。そういえばブラジルは前日優勝したマイラ・アギアールも組み手のルール変更(袖口絞りの限定的許容)をテコに振舞いを変えていた。アウトプットはアギアールが「投げを生かす」、ソウザが「組み手で追い詰める」で結果的にはまったく方向性が違ったが「組み手のルール変更という戦術面での小さな変化を、戦略全体の見直しという高いレベルに昇華し、局所対応ではなく大局的な振舞いまでを変えた」というところでは相似。男女とも上り調子にあるブラジルのスカウティングの濃やかさという角度からも、ソウザの躍進は興味深いものがあった。

2敗で7位、それでも「面白く」「怖い」オルティスの柔道

イダリス・オルティス

書き出せば他にも注目すべきポイントはたくさんあるのだが、個人的に1つ挙げるとすればやはりイダリス・オルティスの戦いぶり。最終成績はメダルなしの7位だったのだが、面白かった。そして怖かった。最高到達点は極めて高いがすべては調整次第のオルティス、そのコンディションが作り切れていなかった今回はいわば「B面モード」の低空飛行だったのだが、それでも「らしさ」を存分に発揮していた。飴玉の芯のみの戦いできちんと順位決定ラウンドに残ってみせた。その「芯」がまず観戦という観点から単純に面白く、そしてパリ五輪を見据えた「仮想敵」の戦力見積もりという視点からはやはり一番面倒で怖い、不確定要素の多い選手という所見を持った。前者(観戦)は「面白さ」、後者(戦力見積もり)は「怖さ」。ないまぜに少し書いてみたい。

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