①一回戦/令和5年全日本柔道選手権大会・全試合戦評

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日時:2023(R5)年4月29日
会場:日本武道館

開会式。選手宣誓は七戸龍が務めた。

文責:古田英毅
写真:乾晋也、辺見真也

一回戦

岩尾敬太(関東・京葉ガス)○優勢[有効・大外刈]△安達健太(近畿・作陽高校教)

岩尾敬太(関東・京葉ガス)○優勢[有効・大外刈]△安達健太(近畿・作陽高校教)
岩尾の大外刈が「有効」

オープニングマッチは初出場同士の対戦。身長183センチ体重128キロの岩尾、169センチ90キロの安達ともに左組みの相四つ。32歳の岩尾、「はじめ」が掛かると屈伸して、初の大舞台にやる気十分。早い勝負を期し、先んじて引き手で袖を掴むと相手の体を乗り越えるようにまず思い切った左大外巻込を一発。さらに引き手一本を残して袖を掴み、釣り手を首裏に入れ、再度の左大外巻込に打って出る。背中についた安達はインパクトを殺してなんとかしのぐも、52秒消極的試合姿勢の「指導」。出遅れた安達はここから反撃開始。まず肩車、さらに引き手で袖を絞っておいて低い左一本背負投を2連発。2発目で岩尾を伏せさせるとすぐさま手首を帯に通してローリングに移る。岩尾の巨体が小さな安達の腹の上で一回転、二回転。会場どよめく中、安達は岩尾を仰向けに落とすと上体によじ登って縦四方固の体勢となる。しかし、絡んだ足を引き抜いた瞬間岩尾がゴロリと横回転すると拘束が解けてしまい、1分57秒「待て」。続いて安達が組み際に右一本背負投を放ち、2分8秒には岩尾にも消極的試合姿勢の「指導」。

安達が流れを掴みかけたこのタイミングで、しかし岩尾が一歩抜け出す。引き手で敢えて襟を低く、腹のあたりを持つと安達は悪くはなしとこれを受け入れて進退。岩尾ここぞとばかりに釣り手を首裏に入れ、思い切り左大外刈を見舞う。安達すばやく回り込みながら背中を抱いて耐えるが、岩尾が刈り足で膝を固定したまま体を捨てるとたまらず転がり、2分26秒「有効」。
安達はしかし冷静、転がった勢いを止めず、まるで己がポイントを挙げたかのような素早さで襲い掛かると手首を帯に通してローリング。岩尾の体を横に置いて「半殺し」状態にしたまま足を引き抜き、縦四方固で抑え込む。しかし体勢が非常に微妙。主審が「抑え込み」の宣告を迷うとみるや、岩尾はこの判断の背中を押すべく被さりに出る。が、己の上に上がってくるこの動きを利して岩尾がゴロリと横回転に転がるともろとも回ってしまい、拘束は解けて「待て」。残り時間は1分3秒。

安達引き手で袖を絞るも、岩尾これを利用して思い切り左大外刈。安達が素早く腰を切って外足を外し、左内股巻込となったこの技は潰れて「待て」。しかし攻勢が評価されて3分28秒には安達に「指導2」。岩尾の巨体を2度ほぼ「抑え込み」にまで持っていった安達はさすがに疲労が目立つ。岩尾は引き手で低い襟を持ってクロージング態勢、安達は右へ肩車、続いて巴投。そのまま中腰で相手に食いついて引き込まんとするが、サイズが違い過ぎて背中に手が回り切らない。安達が走って追い、しかし岩尾はもはや取り合わず旋回。両者の体がようやく触れたところで終了ブザーが鳴り響く。岩尾は全日本初出場で初勝利。互いの体を軽く叩いて健闘を称え合う両者に、大きな拍手が降り注ぐ。オープニングマッチにふさわしい好試合であった。

中野寛太(近畿・旭化成)○足車(1:43)△佐藤光(東北・秋田県スポーツ協会)

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