文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
第37回皇后盃全日本女子柔道選手権大会の評をお送りする。骨の太い進退と瞬間的な出力の高さで投げを連発、手首負傷の影響を感じさぬまま2年ぶり2度目の優勝を飾った冨田は見事。己こそ本命と自己規定したもののみが持つ逞しさ、これまでにない安定感があった。持ちどころの豊かさ、1つのタイミングにスピード・パワー・技術を一気に集める最大瞬間出力の高さ。負傷のハンデで逆に集中力が上がったか、常以上に己の長所を強く意識していた印象。柔道が研ぎ澄まされていた。今季全勝は伊達ではない。明らかに一段強くなっている。
この冨田の強さを大前提として。幾人か、これという選手にフォーカスすることで今大会を語ってみたい。
「世界」のリアル知る振る舞い、むしろ強くなっていた朝比奈
もっとも印象的な選手は朝比奈沙羅(ビッグツリー)。ご存じの通り新型コロナウイルスに罹患し、退院出来たのはようやく大会9日前。好コンディションなど望むべくもない。長い時間を戦うことも、技数勝負も難しい。この中で、「20年間やってきた技術を信じるしかない」(本人談)と朝比奈が定めた勝ち筋は、投げること。試合からこれがはっきり見えた。
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