【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第98回「禍を転じて福とせよ」

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「禍を転じて福とせよ」

出典:「禍を転じて福とせよ」
柔道2巻10号 大正12年11月 (『嘉納治五郎大系』未収録)

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の猛威は、戦争を体験していない世代にとって未経験の脅威となり、日本中を襲っています。そんな中、柔道修行者が、「精力善用」「自他共栄」を合い言葉に、SNSで、様々な情報発信を行い励まし合っているのを目にするようになりました。まだまだ、先が見えない状況で長期戦になりそうですが、喜ばしい動向ではないでしょうか。

このような危機的状況下、もし師範が生きていたら、どのようなことを伝えようとしたか。そんなことを考えても不自然ではありません。もちろん、師範は昭和13年(1938)に亡くなっていますから本人には聞けません。ですが、師範が残した言説から、ある程度の推測や想像をすることは許されるでしょう。

講道館柔道と時事問題を絡めた言説を滅多に目にすることがない、我々にはイメージしにくいことかもしれませんが、講道館柔道のことを扱いながら、当時の社会状況・時事の問題に踏みこんだ師範の言説は少なくありません。講道館柔道は手段であり、その応用を目的としている以上、当然のことかもしれませんが。

そんな残された言説から、師範なら、どんなことを言ったか推測(想像)するのに参考となる史料として、真っ先に思い浮かぶのが、関東大震災直後に発表した「禍(わざわい)を転じて福とせよ」です。

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