「私がこの国民体育を考察した理由は、一面に今日まで行われている柔道の形・乱取の欠陥を補おうとするにあるのだから、平素形・乱取を修行するものも、そこに留意してこの体育を研究もし、また実行もしなければならぬ。」
出典:「精力善用国民体育と従来の形と乱取」
柔道2巻6号 昭和6年6月 (『嘉納治五郎大系』8巻214頁)
本連載では、これまで嘉納師範が構想していた講道館柔道が勝負(武術性)を重視していたこと(第4回、第22回、第29回、第70回など)、また、師範が生きていた頃から、その理想と実際に行われている柔道には隔たりがあったことを紹介してきました。
そんな状況の打開策として(だけではありませんが)、師範が考案したのが「精力善用国民体育」です。晩年の師範の肝いりで全国展開がなされ、世界規模での普及も考えられていた「形」です。
残念なことに、師範の熱心な普及にもかかわらず、戦後は廃れてしまいます。現在は、時々、講道館の鏡開式で披露されるものの、一部でしか受け継がれておらず、知る人も少ないのが実情です。師範、晩年の熱意を考えると、寂しい限りです。
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