文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta
全国高等学校柔道選手権大会の花形カテゴリ、大会最終日(21日)に行われる男子団体試合の展望をお届けする。ご存じの通り今年はコロナ禍により、松尾三郎杯や水田三喜男杯、若潮杯といった大規模ハイレベル招待試合がほぼすべて中止。地区をまたいだ強豪の実戦機会が極端に少なかったゆえ、選手の顔が見えにくく、チームの強さも読みがたい。戦う側にとっても、「見る」側にとっても戦力予想が極めて難しい年だ。
そして今年はコロナ禍の特別措置として恒例の「抜き勝負」から「点取り制」(試合ごとの配列変更可能)へと大会のレギュレーションが変更された。あの、チームの力を最後の一滴まで絞り尽くさねば「負けること」が許されない「抜き勝負」の熱戦が見られないことは単純に残念。この高校選手権の死力を尽くした戦いですべてのチームの選手の顔と戦力の底値が詳らかとなり、これを土台に夏の戦いが組み立てられていくという例年の「流れ」がいかに豊かなものであったかに改めて思いを馳せる次第であるが、それはそれ。新たなレギュレーションによる戦いを存分に楽しみたいと思う。
この「点取り制×配列変更自由」レギュレーションでクローズアップされるのはなんといっても「戦略性」だ。まず「抜き勝負」と異なり、大戦略のミスを現場がカバーする「複数枚抜き」という逆転要素がない。1点は1点、単に大駒を持つだけでは勝ち抜けない。また、オーダー固定のインターハイと異なり、「エイヤでオーダーを出しあった結果だから仕方がない」「あのチームを倒すことに特化したオーダーだから次の試合ではうまく噛み合わなかった」というような失敗の言い訳が許されない。配列と選手の振る舞いから「どう勝とうとしたのか」がシビアに問われることになる。もう1つ言えば、同じく点取り×配列自由ながら7人制で戦う学生優勝大会とは配列の重みが違う。1ポジションの配列ミス、あるいは成功が勝敗に直結する。指揮官が己のチームを良く知り、相手の意図を「読む」こと、そして選手がこれに向かってまっすぐ行動することが例年以上に重要になる大会だ。
この点を頭に置いた上で簡単に有力校を紹介、そして各ブロックの勝ち上がりを見通してみたい。
有力校
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