(③二回戦(上)からつづく)
二回戦
羽賀龍之介(推薦・旭化成)○GS送襟絞(GS1:29)△中野寛太(近畿・天理大4年)
持ち替え、そして落としと巧みに形を変えながら己の力を掛け続ける羽賀が優位。30秒過ぎには両袖から中野を場外まで送り出して「待て」。中野は羽賀の組み手の上手さに付き合い過ぎず、前に出ることで反攻を開始。羽賀に場外際を伝い歩かせ、釣り手の持ちどころが低いことを厭わず、肘を上げることで力を効かせて思い切った左大外刈を放つ。羽賀が組み手を直すたびに中野が前に出て陣地を押し下げる形で試合が進み、状況はやや変化。中野は珍しい右一本背負投崩れの小内刈も繰り出してリズムを掴み始めた印象。1分58秒には主審が双方に消極的試合姿勢の「指導」を与えて展開の加速を促す。羽賀が組み手を直す僅かな隙間を突いて中野が前に出る構図は変わらず。中野はここに得意の足技を交え始め、羽賀が場内に詰まると強烈な出足払に払釣込足を叩き込み、さらに右袖釣込腰も見せてどうやら展開を掴む。中野が羽賀に場外際を伝い歩かせ、左一本背負投に左袖釣込腰と見せた3分16秒には羽賀に消極的試合姿勢の「指導2」。以後も前に出ながら支釣込足に小内刈と叩き込む中野の優位が加速、コーナーに詰まった羽賀が「人」の字に踏ん張って耐えたところで本戦4分間が終了。試合はGS延長戦へ。
羽賀が一足の左内股、しかしここから立ち戻ると中野は左一本背負投の形に腕を入れて突進、下げられた羽賀が前後に開脚する形で滑り崩れて「待て」。羽賀は「内股・小内」のエントリーを期するが中野の前進圧力の前に足が入りきらず。中野は右「一本小内」で逆方向の攻めを見せるとGS45秒には一転思い切った左大外刈で乗り込む。続いて場外際に追い詰めておいての右出足払も放ち「待て」。中野は主導権を完全掌握、攻め込まれる羽賀は絶体絶命。
ここで中野、いったん釣り手を大きく切って左一本背負投に打って出る。しかしいち早く反応した羽賀は中野が回転し切る前に背中に食いつくともたれ掛かって前に伏せ落とし、あっという間に送襟絞に捉える。中野が伏せたときにはもう絞めが効いている状態、中野すぐさま仰向けに回転するが羽賀は拘束を緩めず、GS1分29秒中野観念して「参った」。中野の強さ、羽賀の勝負勘。見ごたえのある一番だった。(戦評・古田英毅)
古田 続きまして第24試合。羽賀龍之介選手と中野寛太選手の試合です。順番からいくと朝飛先生になるんですが、お願いしてよろしいでしょうか?
朝飛 まずは中野選手、あっぱれ!という感じですね。強い。羽賀選手は一昨年に優勝、昨年は準優勝、そして全日本に対しての思い入れも人一倍。かなり気合いが入っていたと思うのですが、むしろ中野選手の圧力の強さ、足技、内股などの強さ、そしてひと回りもふた回りも増した逞しさの方が際立つ試合でした。羽賀選手の方が危ない場面は多かったですね。ただ羽賀選手、「指導2」まで追い込まれながらここぞの一瞬を捉えたのはさすがでした。相手が伏せたときのスピード、繋ぎの上手さ、勝負勘と揃った「一本」でした。
古田 ありがとうございます。上水先生お願いします。
上水 朝飛先生がおっしゃったように、まずは中野選手の強さですね。もうあとワンターン攻めることが出来れば「指導3」が出たのではないかと思います。この強さ、いよいよ本物になって来たなと感じました。羽賀選手の見せ場は最後の絞めの場面だけと言って良かった。あの状況からワンチャンスをものにして勝った羽賀選手は本当に凄いですが、その凄さも逆に言えば中野選手の強さがあって発揮されたもの。ただ、1つ言うと、羽賀選手はコンディショニングの面で少々気の毒なところがあったと思います。選抜体重別(※優勝)が終わってからの3週間弱では、今の彼の体力は回復出来ないですね。満身創痍で臨んだ大会と言って良いかと思います。プラス、初戦で中野選手という組み合わせも厳しかった。二重のプレッシャーが掛かったと思います。もう少し時間があればまた違った試合が出来ただろうなというのが、正直な感想です。
古田 ありがとうございます。西森さんお願いします。
スポンサーリンク