【レポート】配列順開示、勝敗のポイントは次鋒にあり/第71回インターハイ柔道競技男子団体試合マッチレポート①オーダー配列評

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文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

有力校と勝負のポイント

開会式。選手宣誓は新田高・秋山大季主将が務めた。

高校柔道界最高峰イベント、インターハイ柔道競技(令和4年度全国高等学校総合体育大会柔道競技、第71回全国高等学校柔道大会)が6日、愛媛県武道館(松山市)で開幕。まずはもっとも伝統のあるカテゴリ、男子団体試合から競技が開始された。

今年は有力校の戦力に差がない混戦。優勝候補に挙げられるのはまず2週間前の金鷲旗高校大会を制して勢いに乗る埼玉栄高(埼玉)。そして同大会2位の国士舘高(東京)と3月の全国高校選手権を制して金鷲旗でも3位入賞の大牟田高(福岡)が続き、これを全国高校選手権ベスト4の木更津総合高(千葉)と作陽高(岡山)が追うという構図だ。混戦とはいえ、こと優勝を争うレベルのチームというところで絞ればこの5校までと見て間違いない。これに白鷗大足利高(栃木)、加藤学園高(静岡)、崇徳高(広島)らが続くというのがおおまかな勢力マップだ。

今季ここまでの「二冠」の優勝校は前述の通り全国高校選手権が大牟田、金鷲旗が埼玉栄。続けて勝ったチームはない。今代はレギュレーションが大きく結果を左右する、やはり小差の争いであると読み解いていい。インターハイのそれはご存じの通り「配列順固定×点取り制」。どちらかというと総合力型が優位、そして戦略(配列順)が極めて重要になるレギュレーションである。

この第71回大会男子団体戦を見始めるにあたり、気に掛けておきたい要素は2つ。

まずは組みあわせの偏り。上記の「優勝を狙うレベルの5校」のうち実に4校がトーナメント右側(CDブロック)に配された。準々決勝で埼玉栄と大牟田のタイトルホルダー2校、そして国士舘と木更津総合が早くも潰し合う。ただ1校左側に配された作陽は、これに続くクラスタのチームと連戦することになるが、力をしっかり出せば決勝まで進むことがほぼ確実視される配置となっている。

そして配列順。総体戦力の和が最も大きく(=抜き試合で勝った)、かつ勢いのあるV候補筆頭・埼玉栄がタイプ的に取り役・分け役がはっきりした凹凸のあるチームであり、このレギュレーションに向いた総合力型ではないことに鑑みると、今大会における配列順の重要性はいや増す。第71回大会のキモはここにあると言って過言ではない。配列順が嵌まってチームの戦力が最大化されるのであれば、V候補筆頭は間違いなく埼玉栄。しかしこれが嵌まらない、また他校が補欠カードを使って差を埋められるレベルまで配列を「当てる」ことが出来ていれば、試合はどう転ぶかわからない。

インターハイには登録5名のほかに補欠枠が1つあり、チームバランスを左右する「最後の駒」をここに取り置いているチームも多い。もし相手の止めどころがはっきりしているのであれば、ここに補欠取り置きのジョーカーをカスタムで当てて相手の得点力を消し込むことも、あるいは他ポジションに抜き役を入れてハイスコアゲームを志向することも出来る。ただし言わずもがな、1度置いてしまうと「替えられない」のが難しいところ。1チームへのカスタム配列が次で戦う相手にも有効であるとは限らない。先に強豪と当たるチームは汎用性の高い初期登録を、中途の1試合のために崩さねばならない場合も出て来るのである。のっけに組み合わせの偏りを最重要要素の一に挙げたのは、このあたりの事情も絡む。

いずれ大事なのは、「基礎点」とも言える初期登録配列。これが開示されたのは大会開幕の前日、8月5日。一般公開は6日朝のプログラム配布時である。簡単に各校の初期登録を見ておきたい。

有力各校配列紹介・寸評

埼玉栄。坂口稜は次鋒、杉野瑛星を補欠に取り置いた。

埼玉栄高(埼玉)
(先)平野匠啓
(次)坂口稜
(中)粂田和樹
(副)新井道大
(大)峰優月
(補)杉野瑛星

昨年のインターハイ100kg級王者新井道大と全国高校選手権無差別の覇者・坂口稜の「ダブルエース」を誇る埼玉栄のオーダー。優勝候補であり凹凸型のこのチームのオーダー順は、前述の通り今回の各校の配列を読み解く土台であるので、少し字数を割きたい。

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