【連載】eJudoマンガ夜話・第2回 復活プロジェクトを立ち上げたい!「からん」

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「からん」©KON KIMURA/講談社
「からん」©KON KIMURA/講談社

自粛期間のお供に、ぜひ「柔道マンガ」を―。
ひとり稽古もよし、トレーニングもよし、勉強に勤しむのであればなおよし。でもせっかくだからより柔道を知り、色々な形で柔道を楽しむことがあっていい。ここまで一生懸命柔道をやってきた人間だからこそ、その知識や経験をベースに、実際に「やる」こと以外でより深く柔道を味わえる。そんな発見のある期間でもあってもらいたい。

そんな思いから、この「eJudoマンガ夜話」を企画しました。古今の柔道マンガを1回1作取り上げて紹介し、それについてよもやま語って批評するという対談連載企画です。前回の序章「ヒット作の条件は?」に続き、今回は「からん」(アフタヌーンKC・木村紺)を取り上げてお送りします。

<<「からん」あらすじ>>
舞台は京都、伝統あって規律高い校風を誇るお嬢様学校・望月女学院高。主人公の高瀬雅(たかせ・みやび)はこの学校の新入生、中学時代は柔道で京都府44kg級2位の実績を持っている。この高瀬が、九条京(くじょう・みやこ)ら柔道未経験の同級生3人に柔道部入部を持ちかけるところから物語が始まる。
柔道部は部員も少ない弱小チームだが、主将で3年生の大石萌(おおいし・めぐみ)は前年のインターハイ48kg級でベスト4に入った強豪で、今年の優勝候補。1人我が道を行く天才肌の大石、大石を尊敬するがゆえに1年生に対抗心を燃やす金春千成(かなはる・ちな)、大石を上座に据えることで安定する一方で人間関係が硬直化していた部を活性化させんと、トラブルを厭わず積極的に振る舞う高瀬。道場に集った女子高生たちの日常と人間関係の機微を、柔道を通じて丁寧に描く。


語り手:東弘太郎 古今の柔道マンガを「やたらに読み込んでいる」柔道マニア。大メジャーはもちろん泡沫連載のギャグマンガや知られざる怪作まであまねく読み込むその熱量は少々異様。その造詣の深さと見識に編集長が惚れ込み、たって登場願った。競技では「三五十五とも粉川巧とも一緒にインターハイ出場」の実績あり。好きな女性キャラは一緒に酒を飲むなら「柔侠伝」の駒子。もう一度一緒に柔道部生活を送るなら「とめはねっ!」の望月結希。

聞き手:古田英毅 eJudo編集長。自他ともに認める読書家でフィクション好き。ただし柔道マンガに関しても一貫して「いいフィクションは読む」「乗れないものは必ずしも読まない」という姿勢で接してきたため、このジャンルの積み上げは東氏に比べて薄め。まだ見ぬ良き柔道マンガを仕事で読ませてもらえるチャンスと、期待に胸を膨らませている。好きな女性キャラは「からん」の高瀬雅。結婚するなら高瀬、先輩にするなら「帯をギュっとね!」の袴田今日子がいいです。
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東: というわけで、第1回目の「ヒット作の条件は?」という序章を受けて。最初に取り上げる作品がこの「からん」です。

古田: 私と東さんの間で、イチオシとしてたびたび話題に挙がる傑作です。個人的にも大好きな作品であり、いま、いわゆる「ビッグ5」以外でもっとも高く評価している作品であります。

東: 前回、“これがヒットする柔道マンガの条件だ”というものをいくつか挙げさせていただいたわけですが、そのセオリーの中で出てきた「日常生活の描写がキモ」という項。ある意味、その極北にある作品だと思います。

古田: 初読でその表現の濃やかさに圧倒されました。・・・私、恥ずかしながらリアルタイムでは読んでいなかったんですが。

東: 講談社「月刊アフタヌーン」で連載されていたのが、2008年5月号から2011年6月号まで。単行本は7巻まで出ています。

古田: 東さんにこの作品の存在を教えて頂いたのが、ようやっと一昨年でしたか。連載時に知っていれば、もっと応援出来たのにと悔しくてたまりませんでした。もう、出来ることなら今からでも「からん」復活プロジェクトを立ち上げたいくらいです。続きが読みたい!

東: まったく同感です(笑)。・・・それで、これから話をしていくにあたっては「ネタバレ」が避けられないわけですが、どうしましょう?この作品たとえば「ビッグ5」と違って、まだ読んでいない方も結構おられるのではないかと思いますが。

古田: 読み終わっているという前提で、内容についてよもやま話をするというスタイルですので。もし出来ることなら、7巻までを読んでからこの先を読んでもらいたいところではありますね。

東: そうでなくても、もしもこの先読み進める途中で「このマンガ、読んでみようかな?」と思ってくださったら、その時点でいったん記事を閉じて頂くというのがいいかもしれませんね。

古田: なるほど。ではそういうメッセージにしましょう。初読ならではの驚きや新鮮さをぜひ実体験として味わってもらいたいですからね。皆さん、ぜひ、少しでも「読んでみようかな」と思ったらいったんこの記事は閉じて、実物を手に取ってください。

東: というわけで、「からん」」の魅力について。特に「柔道マンガ」の魅力というところに特化して、分析してみたいと思います。

古田: 東さんより、今回は4つの項目を挙げて頂きました。

東: はい。①バトルに頼らない面白さ、②強くならない主人公、③メインキャラ以外への目配り、④細かい会話の充実、という柱を立ててお話していきます。

古田: 加えて。高瀬雅という主人公のキャラクターとその特異さを掘り下げていくことがそのままこの作品の読解に繋がるのではないかと思います。連載は中途で終わってしまいましたが、ここを通じて作者がこの先描きたかった真のテーマが見えるところまでたどり着けるのではないかと思うのです。東さん提案の4つを柱に、折々のタイミングで高瀬分析を積み上げながら、やっていきましょう。

バトルに頼らない面白さ

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