「自分の教えたことでも科学の教えに背いたことがあったら、自分のいうたことよりむしろ科学に従えと説いているのである。」
出典:「講道館の過去現在および将来を述べて館員の奮闘を望む」
柔道5巻2号 昭和9年(1934)2月 (『嘉納治五郎大系』1巻185頁)
嘉納治五郎師範が創始した「講道館柔道」。
柔術を土台にしながら「イノベーション」と呼べる画期的な工夫を数多く行い、それが普及の原動力となったことは、師範自身や講道館、後の識者が主張するところですが、その背景には「科学」的な視点があると言います。
師範の発言から少し見てみましょう。
<柔術諸流は根拠を科学に求めず、流祖各自の工夫を基本として、それを祖述するに止まるものであった>と師範は言います。そのため、伝授がうまくいかなければ、技やその理合いは失伝してしまい、結果、代を追うごとに質が低下していく。あるいは、そもそも流祖の考え自体が優れているか分からない(明言はしていませんが、それを計る基準がない)といった問題があると指摘します。
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