「注意すべきことは、乱取の練習、または試合の最中、帯を締め直すことである。容易(たやす)く解けるような帯の締め方をして出場することは、自分の不用意を示すのみならず、時間を徒費して他人に迷惑を掛けることになる」
出典:「乱取の練習および試合の際における注意」柔道6巻6号 昭和10年(1935)6月(『嘉納治五郎大系』3巻,289頁)
講道館が発行している月刊誌「柔道」平成21年6月号に同年の全日本柔道選手権において行われた長谷川博之九段のスピーチが掲載されています。
内容をかいつまみますと、柔道修行者には「一本を目指す柔道」と「品格ある柔道」を目指して欲しいということ。さらに、柔道の品格を育成するためには、正しい礼と服装を乱さない心構えが必要であると述べています。同じ年の「柔道」11月号の編集後記では長谷川九段の後輩である中村良三編輯部長(当時)が、このスピーチと併せて長谷川九段自身が現役時代から道衣を乱さない選手とされていたことを紹介しています。
柔道衣が乱れることは、道衣の構造や技術の特性から仕方がないと言えるでしょう。ですが、その乱れを放置しておくことが、不躾とされるのは皆様ご存じの通りです。もちろん、道衣と言う以上は、当然のことながら帯のことも含まれるでしょう。今回はこの帯について、師範が遺した言葉を取り上げてみました。
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