出典:「乱取の練習および試合の際における注意」柔道6巻6号 昭和10年(1935)6月
(『嘉納治五郎大系』3巻290頁)
「礼に始まり礼に終わる」。柔道を含む武道をたしなむ人に限らず、広く一般に知られた言葉です。この言葉で「武道を学ぶ人は礼儀正しい」というイメージを思い浮かべる方も少なからずいるでしょう。ただ、筆者の見た限りでは、師範がこの言葉を口にしていたという史料はありません。ですが、決して「礼儀」を軽んじていた訳ではありません。むしろ、大事にしていたというのが、今回の「ひとこと」です。
「礼儀」や「礼法」、あるいは「礼の心(精神)」というものを厳密に見ていくと、様々な見解や相違があるでしょうが、ここでは、そのような細かいことは、とりあえず置いておきたいと思います。
今回の「ひとこと」の出典となる論考が発表されたのは、昭和10年のことですが、この時代も前の時代に比べて、社会一般の忙しさが増しており、そのため、以前ほど丁寧な礼儀が実践できない状況になっているというのが師範の考えです。しかし、そんな中でもゆるがせに出来ないのが「礼儀」だったわけです。
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