「利己を戒むる理由は、利己のため他人を害し、他人の利益を軽んずるの弊があるからであって、利己そのものが悪いからではない。」
出典:「まず皇国のために進んでは人類のために実現せしめんとする吾人の理想(第1回)」
作興5巻9号 大正15年(1926)9月 (『嘉納治五郎大系』8巻258頁)
「利己」。「利己主義」といった使われ方をする、この言葉に何となく良いイメージを持たない方が多いのではないでしょうか。
辞書には<自分だけの利益を考えること、他者を顧みないこと>というような意味が書かれています。師範の解釈は少し違い、「利己」そのものを悪いとは言っていません。「利己」のために他者に対する配慮を⽋きやすいことから、⼀般的に「利⼰」が戒められているというのが師範の考えです。
師範の言うことも分かりますが、やはり、あまり良いイメージがないこの言葉。それは師範の時代も同様だったようですが、そんな中、「利己」そのものは悪くないと、なぜ、あえて言う必要があったのでしょうか。
ここに「自他共栄」に繋がる考えが潜んでいるというのが筆者の考えです。
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