「日本は、柔道においては外国に教うると同時に、その種の尽きぬようあくまでも進歩向上に努めなければならぬ。」
出典:「講道館の抱負とその実現の方法」 昭和4年(1929)1月
(『嘉納治五郎大系』1巻371頁)
満足せず、より良いものを追求しようする師範の姿勢が明確に見て取れます。
ところで、進歩向上の努力を怠ると、どうなるのでしょう。<もし我らが研究を怠れば他日外国人の教えを受けることになり、柔道の逆輸入することがないとは保証できない>というのが師範の見解です。現状をみて、この言葉に驚きを感じるのは、筆者だけではないと思います。
師範の存命中、世界は弱肉強食の帝国主義が横行していました。世界平和を標榜しながらも、師範のリアリズムは国家が発展解消し、世界が1つになるといった理想を許しませんでした。国家は国家として存続し続ける、それが師範の予測でした。そんな中、国家間における優位性を得る手段の一つと考えたのが、自国の文化をどれだけ世界に発信できるかでした。別の史料では、これを株式会社における持ち株に例えています。
では、日本から世界に発信できる文化は何か?師範が考えていたのは、言うまでもなく「講道館柔道」でした。
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