(②一回戦(下)からつづく)
二回戦
太田彪雅(推薦・旭化成)○GS反則[指導3](GS1:39)△小川竜昂(近畿・日本製鉄)
太田が右、小川が左組みのケンカ四つ。釣り手の強さが身上の太田、上から持って肘を入れて重みを掛け、小川の釣り手を下げながら引き手を争う。小川支釣込足を入れていったんは圧を剥がすも、片手内股で引き手を嫌った直後の35秒、「取り組まない」咎で「指導」を受ける。太田再び釣り手を上から入れ、圧を掛けて小川の釣り手を折り、このまま引き手を求める。釣り手を徐々に下げられた小川一計を案じ、支釣込足で位置関係を開くと片襟の右背負投の奇襲。しかし回り切れず、横向きに座り込むこととなって「待て」。このまま太田が求め、小川が忌避して片手内股で切る形で引き手争いが進み、1分55秒には双方に片手の咎で「指導」。小川は早くも「指導2」となり、後がなくなる。
奮起した小川片手の体落と支釣込足を駆使して位置関係を変え、両襟を交えながらチャンスをうかがう。しかし太田は巧み、上から持って圧を掛け、引き手で袖の外側を持つ完璧な組み手を作り出す。ところがこのほぼ文句なしの組み手を作りながら太田は慎重、膕(ひかがみ)への右小外刈を繰り返すのみで大きな技が出ない。30秒近くが経過し、結局小川が引き手で袖を持ち返し、遠間からら大外刈を仕掛けて潰れ「待て」。太田のチャンスは潰える。試合はこのままGS延長戦へ。
太田組み勝つもやはり決定打が出ない。GS延長戦35秒には左一本背負投の奇襲から送襟絞、絞めを効かせたまま抑え掛けるが回り際に拘束を緩めて逃がしてしまう。太田組み勝ち、右小外刈から右大内刈、内股と繋ぐ、続くシークエンスで膕(ひかがみ)への小外刈から股中への右体落と繋ぐと主審ここで試合を止め、GS延長戦1分39秒小川に3つ目の「指導」。チャンピオンとしてこの大会に臨む太田、変わらぬ組み手の強さを見せた一方で、やや慎重に過ぎた感あり。(戦評・古田英毅)
古田 2回戦になりました。第16試合、太田彪雅選手と小川竜昴選手の試合です。西森さんからお願いします。
西森 前回大会優勝の太田選手の初戦、しかも対するは小川竜昴選手という実力者。どういう入りをするのか、というところを注目して見ていました。総体としては一貫して太田選手有利でした。ケンカ四つで、太田選手の強い釣り手を小川選手がなかなか攻略出来なくて、色々仕掛けようとするのだけど効果的な攻撃ができない。ただ、それに対して太田選手の側も慎重になったのか、手数が少なかった印象ですね。もちろん勝敗自体は動かないのですけれども、初戦の入りがこれでいいのかな、とは感じました。他の試合が、積極的に自分の柔道を表現して、結果はもちろん内容的にも良い試合が多かったものですから、余計にこの太田選手の慎重さ……もうすこし厳しく言うと積極性のなさは感じました。硬くなっているのではないかという印象を受けた試合です。
古田 ありがとうございます。朝飛先生お願いします。
朝飛 印象としては西森さんとまったく同じです。しかし、一方で、釣り手を「10対0」と完全に制してから攻撃し、相手が防御姿勢になり「指導」を取るというのは、これまでの太田選手の戦い方の軸でもあります。彼としてはきちんと自分のペースで進んだ試合、手堅く勝っていこうという試合だったのかなとは思いました。ただ、やはり、釣り手が上手いので、立技による「一本」、あるいは崩れ際をしっかり抑えたりする場面を作るだろうと期待していたのですが、最後まで、あくまで手堅かったですね。
古田 ありがとうございます。ここは上水先生の評が待たれるところですね。お願いします。
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