【月刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第115回「熟慮断行」

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月刊・嘉納治五郎師範のひとこと
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「熟慮断行」

出典:「柔道一班ならびにその教育上の価値」(同題講演録小冊子から)明治22年(1889)5月
(『嘉納治五郎大系』2巻129頁)

嘉納治五郎師範は「柔道の勝負の理論を世の百般のことに応用すること」を修心法の内容として紹介していますが(連載第6回参照)、その具体的な内容の1つが「熟慮断行」です。

「熟慮(じゅくりょ)」とは、<よく考えること>。「断行(だんこう)」は<どんなことがあっても行うこと>あるいは<困難や反対を押しきって強い態度で実行すること>といったところが辞書的な意味です。
<よく考えた上で強い意志を持って行う>という感じでしょうか。

それでは、畳の上の「熟慮断行」とはどういうことでしょうか。師範の説明によるとは「熟慮」は、<自分から仕掛ける前に、よくその場合を察して十分考えること>、「断行」は熟慮の結果をふまえ<決断出来た以上は、猶予することなく思い切って決行すること>と言います。
よく考えてチャンスをうかがい、その時がきたら、迷わず思い切って技をかけるということです。この考えが「世の百般のことに応用」出来るということは、皆さん、体感的に理解出来るのではないでしょうか。

ところが、師範、続けて逆のことも言います。
「止まるところを知れ」です。師範は<ある点までは思切って技をかけても、その点に達したならば、すなわちそのところで止まれ>ということです。「ある点」や「その点」など、分かったような分からないような不思議な説明ですが、大切なのは、この言葉は「熟慮断行」と対になっていることです。

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