【連載】eJudoマンガ夜話 第4回「帯をギュッとね!」(後編)/描かれなかった金鷲旗とインターハイを妄想レポート!

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「帯をギュッとね!」<br>
©Katsutoshi Kawai/小学館
「帯をギュッとね!」
©Katsutoshi Kawai/小学館

世にあまたある柔道マンガを、「柔道」側からの視点でよもやま語って批評する「eJudoマンガ夜話」。今回は第3回に続く、「帯をギュッとね!」(少年サンデーコミックス・河合克敏)の後編です。

<<「帯をギュッとね!」 あらすじ>>
中学3年生の昇段試験で出会い、揃って「抜群」の6人抜き昇段を果たした実力者たちが、まだ柔道部のない新興校の県立浜名湖高校で再会を果たす。主人公の粉川巧、同じ北部中学の杉清修、南部中学の斉藤浩司、東部中学の宮崎茂と三溝幸宏の5名である。これに巧の幼馴染の近藤保奈美とその友人海老塚桜子を加えた7人が同じクラスとなり、担任である倉田龍子を顧問に迎えて新たに柔道部を立ち上げる。出来たばかりの1年生チームは巧を軸に奮闘、最初の地区予選でベスト4に入る活躍を見せ、コーチとして関わる倉田典膳の導きもあって全員が徐々に強くなっていく。丁寧な柔道シーンの描写はもちろん、「NEW WAVE JUDO COMIC」と銘打たれた通り、当時の週刊少年サンデーらしいスタイリッシュな絵柄に軽妙なストーリー運び、随所に交えられるギャグ、そして「楽しんで強くなる」という新たな価値観を以て、スポ根のイメージが強かったそれまでの柔道マンガと一線を画し、人気を博した。連載は1988年から1995年まで。

語り手:東弘太郎 古今の柔道マンガを「やたらに読み込んでいる」柔道マニア。大メジャーはもちろん泡沫連載のギャグマンガや知られざる怪作まであまねく読み込むその熱量は少々異様。その造詣の深さと見識に編集長が惚れ込み、たって登場願った。競技では「三五十五とも粉川巧とも一緒にインターハイ出場」の実績あり。ラーメンを食べるなら、「YAWARA!」でジョディが5人前注文した「中華満腹軒」か、「帯をギュッとね!」斉藤の実家「サッポロラーメンさいとう」か、「いでじゅう!」のヒロイン森さんの実家「ラーメン笑福軒」か、思案中。

聞き手:古田英毅 eJudo編集長。自他ともに認める読書家でフィクション好き。ただし柔道マンガに関しても一貫して「いいフィクションは読む」「乗れないものは必ずしも読まない」という姿勢で接してきたため、このジャンルの積み上げは東氏に比べて薄め。まだ見ぬ良き柔道マンガを仕事で読ませてもらえるチャンスと、期待に胸を膨らませている。競技では三五十五と同級生、「片手背負い」をマネして肘を痛め、インターハイの時は右背負投が掛けられませんでした。

(前回から続く)

80年代末から90年代前半の地方柔道部の空気を体現

東: さて。魅力の4つ目、ということでこのトピックに移りたいと思います。これもここまでの話で既にかなり出てしまっているのですが、当時の地方柔道部の空気感が良く描けている。まずは女子部員の存在をきちんと描いているところ。少ない女子と、男子が同じ道場で共存して一緒に稽古するのが、あの時代のリアルなんですよね。

古田: 意外にみなそこに向き合って描いていないですよね。まだ女子が部として独立して活動しているところは少なかった。…また、来留間麻里ちゃんが一気に福岡国際まで辿り着いてしまうというのもあの時代の空気感。女子はまだまだ競技人口が少なく、大会も整備され始めたころで、才能のある選手は短い時間であっという間にトップに駆け上がれる土壌があった。上のレベルは高いけれども、中間層が薄くて、制度的に門戸が開かれていた。今以上に夢が持てる時代でした。いまだと若い選手がどんなに強くとも、カテゴリ内の大会を勝って、その上位の大会を勝って、というプロセス自体に時間が掛かりますから、夜が明けてみたら突然スター誕生というああいう感じはない。まさに草創期ならでは。当時はあんな空気感でしたね。

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