【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第19回「柔道の修行者は、今日多くの世人の罹っている病気すなわち軋轢・衝突・怠慢・無効の勤労のごとき、精力善用・自他共栄に反した通弊を戒めるため、急先鋒として起たなければならぬ。」

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嘉納治五郎師範_MASTER JIGORO KANO

柔道の修行者は、今日多くの世人の罹っている病気すなわち軋轢・衝突・怠慢・無効の勤労のごとき、精力善用・自他共栄に反した通弊を戒めるため、急先鋒として起たなければならぬ。

出典:「柔道の使命を論じて修行者の融和結束を望む」 
柔道 第2巻10号 昭和6年(1931)10月(『嘉納治五郎大系』1巻,35頁)

今回の「ひとこと」は師範から柔道修行者に向けた、いつもより直接的なメッセージです。

講道館柔道から生み出されたとされる「精力善用」「自他共栄」により、嘉納師範が社会を変えようとしていたことは、これまでも紹介してきました。

そのためこの「精力善用」「自他共栄」は、柔道修行者あるいは柔道界のみならず、柔道以外の人々に向けた言説の中にも遺されています。

また、師範が頻繁に行っていた講演等のテーマも決して柔道だけに限られてはいません。講道館柔道の創始者・師範であると同時に、東京高等師範学校の校長、さらには貴族院議員やオリンピック委員会委員であった師範は、様々な場で柔道以外の話をしていますが、その中でもやはり「精力善用」「自他共栄」について言及しています。それは決して柔道のすばらしさを語り、柔道に勧誘するためではなく、「精力善用」「自他共栄」で社会を変えようと本気で考えていたからでしょう。

ところが、その普及は難しくかつ師範の思う通りにはいかなかったようです。講道館柔道の普及は師範の理想と異なる方向で進んでいきましたが、「精力善用」「自他共栄」の普及も並大抵の苦労ではなかったと思います。「精力善用」「自他共栄」の二語が柔道界にしか遺っていない事実、あるいは歴史を繙いても柔道史以外で、その言葉を見いだせないことからも、普及活動の結果は明らかでしょう。

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